鳥瞰図

 「鳥瞰図」と書いて何と読む?答えは「ちょうかんず」で、鳥のように高所から下を見て、描いた地図や絵図をいう。「とりあえず」という面白い誤読もある。漢字では「取り敢えず」だが、これを「鳥敢え図」としてみたら、なるほど「鳥瞰図」と似ている▲高い所からこの国の未来を見渡し、地図を広げ、行き先を矢印で示す。首相の施政方針演説とはいわば、鳥瞰図だろう。「異次元の少子化対策」を実現するのだと、岸田文雄首相は息巻いた▲児童手当をぐんと増やしたりして「先送りの許されない課題」に挑むという。では、その予算はいったい、どこから持ってくるのだろう▲威勢よく「行き先」が語られるばかりで「どうやってたどり着くか」は語られない。大所高所の「鳥瞰図」を、目先の向こう受けを狙った「とりあえず」と、つい読みそうになる▲防衛費を増やすために「増税する」とも、きのうは明言しなかった。少子化対策にしても防衛費にしても国民の負担増がちらつくが、いま、それに触れるのはどうやら避けたらしい▲首相は「国会で正々堂々と議論する」と語った。火花を散らすような論戦をひと時も拒んではなるまい。山頂を目指して、どのルートを進むのか。危険はないか。それを語り尽くしてこその「鳥瞰図」に違いない。(徹)

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