坪田譲治文学賞にいとうみくさん 岡山市発表、3月4日に贈呈式

いとうみくさん(撮影・森清)

 岡山市は24日、大人と子どもが共有できる優れた作品を対象にした「第38回坪田譲治文学賞」に、作家いとうみくさん(53)=東京=の「ぼくんちのねこのはなし」(くもん出版)を選んだと発表した。3月4日に市内で贈呈式がある。

 受賞作は「ぼく」が生まれる前から飼われている16歳のネコ・ことらが腎不全を患い、家族で看病する物語。動物病院に通う日々が続き、ことらの状態は良くなったり悪くなったり。少年とことらの物語を通じ、命や家族の問題を問いかける。

 いとうさんは神奈川県出身。児童文学を多く手がけ、2020年には「朔(さく)と新(あき)」(講談社)で野間児童文芸賞を受賞している。いとうさんは「飼いネコの闘病中、やるせなさにどうしようもなくなり、この状況を書いてみようと思った。賞を授けていただき、ありがとうございました」とのコメントを寄せた。

 21年9月からの1年間で出版された小説や児童文学など101作品のうち、予備選考を通過した5作品を作家の阿川佐和子さん、五木寛之さんら7人の選考委員が審査した。阿川さんは「リズミカルな文章の流れの中で心に染み入るいい作品」と評価した。

 賞は市出身の坪田譲治(1890~1982年)を顕彰し、84年に創設。賞状やメダル、副賞100万円が贈られる。

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