道路ど真ん中に標識 なぜ? 車は通れそうだが... 足利の渡良瀬橋たもと 【あなた発 とちぎ特命取材班】

道路の真ん中に設置されている案内標識

 栃木県足利市内を車で走っていると、異様な光景に遭遇した。道路隅にあるはずの案内標識が、道路の真ん中に居座っているのだ。その場所とは、歌手森高千里(もりたかちさと)さんの曲で有名な「渡良瀬橋」の目の前にある「渡良瀬橋北交差点」(同市通4丁目)。車は標識の左右を通行できるようだが、なぜ中央に? 下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」の記者が疑問を解消するため、調査を開始した。

 標識は渡良瀬橋を通過して市役所方面へと向かう市道に立っている。「市街」や「織姫神社」などの方向が示され、「この先100メートル 自動車は通り抜けできません」との看板も取り付けられている。

 その道を歩いて進むと、途中には数軒の店や民家があり、JR両毛線の踏切に行き当たった。踏切には車止めが設置され、予告通り通過できない。なぜなのか。近所で尋ねて回った。

 標識近くの飲食店「よね吉」の店主松崎正幸(まつざきまさゆき)さん(47)は「通り抜けようとした車が、行き止まりと分かってか、引き返してくるのを見かける」と教えてくれた。「10年ほど前に移転してきたので経緯は分からないけれど、私が生まれる前からあったみたい」

 「この道は50年以上前、バスが通る主要な道だったんだよ」と明かすのは、地元の自治会長岩脇利夫(いわわきとしお)さん(74)。「ただ、その頃、すぐ西に線路をまたぐ橋(跨線橋)ができたため、この踏切が通行止めになった」と言う。

 近くに住む高齢男性がさらに解説してくれた。「跨線橋ができた後も、渡良瀬橋を渡ってそのまま真っすぐ進んでしまう車が多かった。だから、通り抜けできないことを示す標識を道路の真ん中に立てたんだ」。その後は進入する車が減少したという。

 標識を管理する市道路河川保全課に調べてもらうと、跨線橋ができたのは1963年。この踏切で車の通行が規制されたのは65年だった。

 住民の意見はさまざまだ。「この道は通学路になっている。標識のおかげで安全だ」との声がある一方で、逆に「標識が道路の真ん中にあると危険」との指摘も。同課は「これまで地元自治会から要望がなかったこともあり、現時点で移設や撤去については考えていない」としている。

 注意をしながら街なかを巡ってみると、不思議なモノを目にすることがある。あなたの身の回りにもありませんか?

道路の真ん中に設置されている案内標識。奥には渡良瀬橋が見える
案内標識周辺の地図

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