「韓国語学べる」全国から生徒 対馬高・国際文化交流科20年 日韓の“架け橋”に

韓国語の日常会話の授業をする金講師。この日は相手を食事に誘うフレーズなどを教えた=対馬高

 対馬市厳原町の長崎県立対馬高(植松信行校長、400人)の国際文化交流科が、前身のコース発足から今春で20年を迎える。「全国の公立高で唯一韓国語を専門的に学べる学校」を掲げ、韓国人講師による授業に加え、韓国・釜山での現地実習などに取り組む。国際色豊かな特色を誇り、全国各地から「離島留学生」が集う場となっている。

■検定
 23日午前。韓国人の金京兒(キムキョンア)講師が、1年生に日常会話の授業をしていた。黒板にはハングルが並び、相手を食事に誘うフレーズなどを熱心に教えていく。「チャリョ、キョンレ」。授業が終わると、生徒が韓国語で号令をかけた。
 同校は2003年、日韓交流の担い手を育成する国際文化交流コースを新設。島外から「離島留学生」の受け入れを始めた。当初の定員は20人程度。次第に応募者も増えてきたことや、授業の充実を図るため19年、学科に改組し、定員は40人になった。
 韓国人講師2人を中心に毎日最低一コマは語学や韓国文化、政治経済などを学ぶ。例年は1年生の時に釜山で約2週間の海外研修にも取り組む。各種韓国語の検定試験にも挑戦。対馬出身の1年生、廣幡あいなさん(15)は「以前は保育士になりたかったが、今は通訳として島に貢献したい」と意気込む。

■刺激
 同学科には現在、1~3年生計約70人が在籍。9割以上が島外生で、出身地は17府県に上る。金講師は「全国各地の生徒が同じ空間で過ごし、ともに学ぶことで刺激になり、地元生の視野も広がる」と強調。K-POPや韓流ドラマで韓国語に興味を持った女子生徒が多いという。
 島外生は、寮や下宿で生活。親元を離れ、故郷から遠く離れた島で暮らすことから、ホームシックなどに悩む1年生は毎年いるという。同校では、保護者や下宿先との連絡、生徒のケアなどを担う「離島留学支援員」を1人配置。主任の吉永郁代教諭は「一人一人の調子を気にかけ、手厚くサポートしている」と話す。
 3年生の田染(たしぶ)愛梨さん(18)は静岡県富士市出身。韓国文化が好きで、家族から独立して学びたいと同校を選んだ。高校生活を振り返り「親元を離れ、家族の大切さを改めて知った。精神的にも成長できた」。この春からは、韓国・大邱の大学に進学する。

■体験
 ここ数年は新型コロナウイルス流行を受け、釜山での海外研修は休止中。リモートで国内外の高校生らとの交流授業にも取り組む。ただ、コロナの影響などもあり、現1~3年生はいずれも定員以下の在籍数だ。
 生徒を呼び込むため、どうすればいいか。金講師は「語学の勉強は動画サイトなどで簡単にできる時代。海外研修や、対馬島内で韓国とのゆかりが深い場所を巡る現地実習など、“生の体験”を、今よりもっと増やしてあげたい」と言う。
 同学科・コースの累計卒業者数は、本年度見込みも含め計392人に上る。毎年、3分の1程度が韓国の大学に進学。語学力を生かし、観光業や海運業、航空会社、貿易会社などで国際的な仕事で活躍する卒業生もいる。金講師は「地理的にも文化的にも、対馬は日韓関係に欠かせない。生徒たちには、日韓の架け橋になってほしい」と期待を込める。


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