被ばく医療の基礎構築 「永井隆平和賞」に前川氏 東京で授賞式

村田所長から賞状盾を受け取る前川氏(右)=県東京事務所

 原爆被爆や放射線被ばくの治療、研究に貢献する個人・団体に贈る第14回永井隆平和記念・長崎賞に、東大名誉教授で上溝介護老人保健施設いずみ(神奈川県相模原市)の前川和彦施設長(81)=川崎市=が決まり、6日に東京都の県東京事務所で授賞式があった。
 同賞は被爆医師、故永井隆博士の平和希求の精神を受け継ごうと、県や長崎市、長崎大などでつくる長崎・ヒバクシャ医療国際協力会(NASHIM=ナシム)が隔年で贈っている。
 前川氏は、1998年に発足した放射線医学総合研究所被ばく医療ネットワーク会議委員長を務め、99年に起きた茨城県東海村のJCO臨界事故では被ばく患者治療の陣頭指揮を執り、高線量被ばくの病態生理を明らかにした。
 東京電力の福島第1原発事故では、内閣府の特別調査員として、被災者の被ばくに関わる長期的な医療や健康管理などについて助言し、福島原発内における緊急医療体制を整えた。これらの活動から、日本の被ばく医療体制の基礎構築を黎明(れいめい)期より中心で支え、ヒバクシャ医療の向上と発展に貢献したと評価された。
 授賞式は長崎と東京をオンラインで結んで開き、森崎正幸会長が「多岐にわたる活動に満場一致で授与を決定した」とたたえ、村田利博県東京事務所長が賞状盾や副賞を手渡した。前川氏は「私のささやかな被ばく医療との関わりが顕彰され、この上もない喜び。被ばく医療に努めている次世代の人たちの励みにもなればと思う」などと語った。

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