【第3四半期決算】デンカが増収減益、スペシャリティー化のためのコスト増やセメント事業からの撤退など響く

デンカ株式会社の青海工場(新潟県糸魚川市)

デンカ株式会社(東京都)は7日、2023年3月期第3四半期決算(連結)を発表した。売上高は3,087億3,300万円(対前年同期比8.7%増)、営業利益は260億6,000万円(同△19.0%減)、経常利益は237億3,600万円(同△21.1%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は88億4,200万円(同△61.4%減)と増収減益になった。

当第3四半期連結累計期間のデンカの業績は、数量面では世界経済減速の影響を受け、主力製品の一部で需要が減少したが、原材料価格の上昇に応じた販売価格の見直しを行ったほか円安による手取り増があり、前年同期に比べ247億5,500万円の増収となった。

利益面では、原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を行ったが、スペシャリティー化進展のためのコスト増があり減益となった。親会社株主に帰属する四半期純利益は、ポートフォリオ変革としてセメント事業からの撤退を決定したことから特別損失を計上した。

電子・先端プロダクツ部門

高純度導電性カーボンブラックは需要が堅調に推移したほか、販売価格の改定により増収となり、窒化ケイ素もxEV向けの需要が堅調に推移した。一方、電子部品・半導体関連分野向け高機能フィルムや球状溶融シリカフィラーは、パソコン、スマートフォンなどの民生向け需要の減少により販売数量が減少した。また、球状アルミナの販売も、xEVや5G関連向けは堅調に推移したが、民生向けの需要が減少し全体では前年を下回った。

このほか、自動車産業用向けの金属アルミ基板“ヒットプレート”やLED用サイアロン蛍光体“アロンブライト”も前年を下回った。

この結果、同部門の売上高は697億9,100万円(対前年同期比36億3,000万円、5.5%増収)となり、営業利益は137億5,300万円と前年同期に比べ4,100万円(0.3%)の減益となった。

ライフイノベーション部門

インフルエンザワクチンの出荷は生産能力を増強したことから前年を上間わった。一方、新型コロナウイルスの抗原迅速診断キットおよびインフルエンザウイルスとの同時診断キットは、感染の拡大に加え、地方自治体を通じた高齢者施設への配布や家庭や職場でのスクリーニング検査など需要の裾野が拡大し出荷量が増加したが、保険点数引き下げにより価格が大幅に下落し減収となった。

この結果、同部門の売上高は387億7,400万円(前年同期比26億1,600万円、7.2%増収)となったが、営業利益は115億3,800万円と前年同期に比べ4億100万円(3.4%)の減益となった。

エラストマー・インフラソリューション部門

同部門はウクライナ危機に端を発した原燃料価格上昇の影響を大きく受けた。クロロプレンゴムは販売数量が前年を下回ったが、原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を行った。

このほか、肥料の販売は前年を上回り、特殊混和材の販売は概ね前年並みとなった。一方、セメントは原燃料価格の上昇に対して価格転嫁が一部にとどまった。

この結果、同部門の売上高は945億3,000万円(前年同期比169億9,600万円、21.9%増収)となり、2,100万円の営業損失(前年同期は営業損失11億6,400万円)となった。

ポリマーソリューション部門

スチレン系製品は原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を進めた。数量面では、ABS樹脂や透明樹脂は自動車減産や中国経済減速の影響を受け減少し、デンカシンガポール社のMS樹脂はテレビやモニター向けの需要が減少した。このほか、スチレンモノマーは定期修繕によるコストの増加があり、食品包材用シートおよびその加工品、合繊かつら用原糸“トヨカロン”の販売は前年を下回った。

この結果、当部門の売上高は938億9,900万円(前年同期比11億8,200万円、1.3%増収)となり、10億8,700万円の営業損失(前年同期は営業利益62億6,700万円)となった。

その他部門

YKアクロス株式会社などの商社は取扱高が概ね前年並みとなった。

この結果、当部門の売上高は117億3,700万円(前年同期比3億2,900万円、2.9%増収)となり、営業利益は21億700万円と前年同期に比べ5億8,000万円(38.1%)の増益となった。

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