元職員「二度と起きないで」 長崎・グループホーム火災10年 遺族ら現場跡地に献花

花を手向け、手を合わせる米𠮷さん(手前右)と飯田さん=8日午前10時28分、長崎市東山手町

 長崎市東山手町の認知症高齢者グループホーム「ベルハウス東山手」の火災は8日で発生から10年。遺族らが現場跡地を訪れ、花束を手向けた。当時、一人で夜勤をしていて自らも負傷しながら入居者の救助に当たった元職員米𠮷則子さん(66)は「二度とこのような火災が起きないでほしい」と訴えた。
 火災は2013年2月8日午後7時半ごろ発生。入居者5人が死亡し、7人が重軽傷を負った。火元は居室内にあったリコール対象の加湿器だった。その夜、夜勤だった米𠮷さんは、火災報知機の音を聞き火元を探した。煙が充満する建物内に何度も入り入居者を助けだそうとしたが、救えない命もあった。
 「節目」が近づくにつれ当時の記憶がよみがえり、精神状態は不安定に。この10年、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などで多量の薬を服用。救助時に負った足のけがや、家族のように接していた入居者を助けられなかった心の傷が癒えず苦しみ続けてきた。
 施設の運営会社元代表に対し「遺族に対してきちんと謝罪し、反省を示してほしい」と求める米𠮷さん。会社側の責任を問い続けるため自らも氏名を明かして取材に応じた。「(亡くなった)5人のことを忘れたことはない」。そう言って現場で手を合わせた。
 亡くなった入居者の一人井上ハツコさん=当時(86)=のおいで、雲仙市吾妻町の飯田光一さん(65)も現場で献花。火災を機に、高齢者施設の防火体制が見直されたとし「施設は入居者にとってついのすみか。(各施設の職員は)あの日のことを忘れず、改めて火災への危機感を高めてほしい」と語った。
 長崎市の50代女性は母親のように慕っていた大伯母=当時(88)=をベルハウスの火事で亡くした。以降「おばちゃんをホームに預けたのは自分」との自責の念から精神疾患に苦しみ、今でもサイレンの音を聞くと取り乱して涙が出る。「現場でパニックになるかも」と思い、8日は自宅で大伯母を悼んだ女性。「天国で安らかにいてくれれば」と願った。


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