〇〇に入る文字は

 あ、今もこの質問するんだ…と懐かしく感じた。ネットの中継で眺めていた県の新年度予算案発表の記者会見。質疑応答の中で大石賢吾知事に向けられた“お約束”の2問は「予算に名前を付けるとしたら?」と「自己採点は何点?」▲「ネーミングは特に考えていません」「点数を付けるのは差し控えたい」と画面の知事。無難な「模範解答」と受け止めるべきなのだろうか。しかし、もしも自分が取材の現場にいたら軽く落胆したかもしれない。なんだ、何にも答えてくれないのか▲型通りの質問だ。こんな問いばかりでは行政の“先例主義”を笑ったり批判したりする資格は何だか怪しい。たとえ、知事が自分でつけた点数が何点だろうと、予算の中身やそれに対する評価が変わるわけでもない▲ただし、この「どうでもいい質問」に対する答えには、話者の本音が時々交ざることがある。その場で考えて即興で探し出した言葉にはその人の人柄が色濃くにじむことがある。だから尋ねるのだ▲昨年の知事選、とても大胆な選択の結果、ピカピカの新知事を誕生させた私たちは、でも、驚くほど彼のことをまだ知らない。いったいどんな人なのだろう▲「大石知事って〇〇〇」-。半月先には就任から1年になるのに、〇に入る文字がなかなか増えてくれない。(智)

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