<救急医療>持続可能な体制づくり急務 2023年度 長崎県予算案点検

昼夜問わず救急患者に対応する医療現場。看護師不足など課題は多い=長崎市、長崎みなとメディカルセンター

 県民の命を守る救急医療体制は、新型コロナウイルス感染拡大で大きく揺らいでいる。昨年11月中旬ごろからの流行「第8波」では病床が逼迫(ひっぱく)し、救急車で運ぶ患者の受け入れ先が決まらない事案が全国で多発。本県も例外ではなく、長崎市消防局によると、救急隊と病院との交渉が最大24回に及んだケースも。
 こうした「異常な状況」(同局)の改善を図るため昨年末から、平日の日中は長崎みなとメディカルセンター(長崎市新地町)が搬送先の決まらない救急患者の「一時収容」を担っている。同センターの門田淳一院長は「人手不足を病院間でカバーし合う『継ぎはぎ』の対応で維持してきたが、コロナ禍でパンクした」。救急の現場が実はコロナ禍以前から厳しい状況にあったと明かす。
 県は2023年度当初予算案に救急医療体制の維持に向けた関連事業費1800万円を計上。現場と行政が課題を共有し、各医療圏の病院が休日夜間の救急患者を交代で受け入れる輪番制度などについて、持続可能な在り方の検討を急ぐ。「一病院ではどうしようもできない。状況は待ったなし」と門田院長。行政の強いリーダーシップを求める。
 みなとメディカルの早川航一救命救急センター長は、一番の課題として「看護師不足」を挙げる。県によると、看護師を養成する県内の大学や看護学校などの卒業生は21年度末で805人。このうち県内の医療機関に勤務するのは6割程度にとどまる。県は、県内の医療機関に一定期間勤務することを条件に返済を免除する修学資金の貸付事業を継続し、新年度予算案には県病院企業団の看護師確保事業費1600万円も盛り込んだ。
 救急現場の負担軽減に向け、けがや急病で救急車を呼ぶかどうか迷った時の電話相談窓口「#7119」の導入も全市町と検討を進める。県内の周産期医療については産科医らと協議し、持続可能な体制づくりに取り組む。

 就任1年目の大石賢吾知事にとって初の本格編成となった新年度予算案。各分野の主要事業を中心に点検する。


© 株式会社長崎新聞社