“心のバレー”次は西海で 九州文化学園・井上監督 西彼杵高就任会見

「いろんな方の気持ちをいただいて本当にありがたい」と語る井上監督(左)=県庁

 長崎県西海市などは16日、3月で定年退職する九州文化学園高(佐世保市)女子バレーボール部の井上博明監督を、4月から西彼杵高(西海市)女子バレーボール部の外部監督に招くと正式発表した。県庁で会見し、同校の北村富啓校長は「学校の活性化につながり、生徒や保護者、地域、長崎県、全国の皆さんに応援していただける部になることを期待する」と述べた。
 井上監督の招聘(しょうへい)は、退職を知った西海市バレーボール協会が市や学校に働きかけて実現。市議会副議長で同協会の朝長隆洋会長は「市内の高校は宝。市の政策の柱として予算を確保し、活性化に力を入れている状況」とした上で、県立校にどう井上監督を迎え入れられるのか関係者と模索してきた経緯を説明した。
 市は4月から井上監督をスポーツ専門指導員の非常勤職員で雇用。5年間休部していた西彼杵高女子バレーボール部の活動を再開する。松川久和副市長は「魅力ある学校づくり、伸び悩む入学者の増加につながると確信している。できる限りの支援をしていく」と杉澤泰彦市長のコメントを代読。バレーを通じたまちづくりに意欲を示した。
 一方、九州文化学園高バレーボール部の今後について同校の安部直樹理事長は「正直、井上君の存在が全てだった。今のところ将来のことは考えていない」と話した。
 1、2年生部員の多くは井上監督の指導を継続して受けることを要望しており、県高校教育課の田川耕太郎課長は「転校はやむを得ない事由において認めてきた。今回は生徒たちの責任に帰すべき事由ではない。将来を最優先に考えると、そういったところを柔軟に対応していきたい」と転校のルートはつくるとした。

◎応援してもらえるチームに 65歳「知力と経験値生かす」

 九州文化学園高女子バレーボール部を全国屈指の強豪に育て、4月から西彼杵高で指導する井上博明監督は会見で「ここに至るまでに、いろんな方の気持ちをいただいて本当にありがたい」と第一に感謝を強調。「体力は落ちてきたが、知力と経験値は膨らんできている。それを生かしながらやりたい」と語った。
 日体大卒業後の1980年から九州文化学園高で指揮を執り、15度の日本一に輝いた。「いろんな意味で奇跡。(就任時は)小さな女子校で、日本の端っこで、長崎県のバレーのレベルは低くて…。“育児は育自”で、指導をするおかげで自分も成長できた43年間だった」と振り返った。
 これまで同様に、新天地でも「人の心を動かすバレー」を掲げる。「何を考え、どういう気持ちで、何を見てやるのか。すべて形あるものじゃないし、目に見えない。真実と書いて“こころ”と読む。その真実を求めて頑張ることで、地域の方々にも応援していただけるようなチームになると思う」と意気込んだ。
 その指導の原点として同じく教員だった両親について感慨深げに話す場面も。南島原市での幼少期から「目の前の子どものために一生懸命やっている姿を見て大きくなった」。自身が教職に就いたときは「現場、現実、現物をよく見て、教育の原理、原則、原点は何なのかを常に頭に置いて指導するんだぞと言われた」と懐かしんだ。
 「もう両親ともにいないけれども“そうだ、その通りだ”と褒めてもらえるような活動をやっていきたい。個人的なことだけど、それが一番の親孝行」。65歳の名将はこれからも現場から離れずに子どもたちを育てていく。


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