出島メッセ効果いかに 交流人口 鍵握るソフト面の充実 <長崎市政・田上市長4期16年>

約2000人が参加した昨年10月の全国会議。にぎわいを市内全域に広げるには、ソフト面の取り組みの充実が求められる=長崎市、出島メッセ長崎

 昨年10月、長崎市のJR長崎駅西口に隣接する出島メッセ長崎(尾上町)に全国から約2千人が会議のため集まった。初日を終え、宮崎県から訪れた参加者は「長崎に来るのは7、8年ぶり。地元にお金を落とさないと」と言って、駅前の商店街へ繰り出した。
 学会や会議などを誘致し、交流人口の拡大を図るMICE施設。総事業費216億円を投じた市長田上富久肝いりの大型事業だ。2014年の正式表明後、用地取得の予算案が「説明不足」などとして市議会で否決。市内35カ所での市民説明会開催など紆余(うよ)曲折を経て、21年11月に開業にこぎ着けた。
 長崎の基幹産業の一つである観光産業。▽35年ぶりの端島(通称・軍艦島)上陸解禁(09年)▽世界新三大夜景認定(12年)▽15年と18年の世界文化遺産登録-などを追い風に、観光客数は14年から4年連続で過去最多を更新した。長崎港のクルーズ船寄港回数が全国2位の年間267回となった17年には700万人を突破し、18、19年もほぼ横ばいで推移した。
 だが、20年の新型コロナウイルス禍で状況は一変。クルーズ船は姿を消し、同年の観光客数は250万人台にまで落ち込んだ。
 そんな中だっただけに、昨年9月の西九州新幹線開業を前にした出島メッセ長崎のオープンに経済界は期待。コロナ禍での船出となったが、1年目の利用者数は約66万人で年間目標を上回った。だが元来ターゲットとする学会や一般会議では目標値に届かず、大型イベントがなければ達成できなかった。
 市中心部の6商店街でつくる「浜んまち6商会」会長の本田時夫(69)は「メッセができて、まちに人が増えた実感はあまりない」と率直に語る。にぎわいを市内全域に広げるには、ソフト面の取り組みをいかに充実させるかが鍵を握る。
 コロナ禍からの回復需要に期待が高まる一方、企業側は人手不足に苦慮。長崎市と西彼長与、時津両町の法人タクシーの運転手は昨年末で1373人。コロナ禍前の19年3月末に比べると400人以上減った。運転手不足で車両の実働率は6割程度にとどまる。
 市タクシー協会長でラッキー自動車社長の川添暢也(58)は「利用状況はコロナ禍前の8割程度まで戻ったが、乗務員の確保が大きな課題」と話す。女性が働きやすい環境づくりやデジタル化をさらに進め、将来的には外国人材の活用を見据える。
 交流人口の拡大を図り、その効果をいかにして行き渡らせ、同時に直面する課題を克服するか-。試行錯誤が続く。
 =文中敬称略=


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