<インバウンド>福岡経由の誘客に注力 2023年度 長崎県予算案点検

雲仙地獄を見学する訪日外国人客=雲仙市(県提供)

 「外国人客が少しずつ戻ってきている。最近は台湾人が多い」。長崎市南山手町の大浦天主堂に続く坂道。土産を売る女性店員の声は明るかった。「この前は『インスタでここのカステラがおいしいと紹介されてたから』って買いに来てくれて」。以前に比べ、詳しく下調べをしてくる外国人観光客が増えた印象を受けている。
 県によると2018年、本県に宿泊したインバウンド(訪日客)は過去最高の延べ92万9千人に上った。だが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、出入国が制限。本県観光も大きな打撃を受けた。昨年10月に日本の水際対策が緩和されて以降、訪日客数は右肩上がりの回復を見せている。
 ただ、長崎空港と海外を結ぶ航空路線は再開しておらず、現在は大半が福岡空港を経由しているもよう。そこで県は新年度、福岡からの誘客に注力。同空港に発着する海外航空会社と連携し、本県の情報発信を強化するほか、県内宿泊者に県産品の土産も準備し“お得感”も加える。
 県が重点市場と位置付ける台湾、香港、韓国、中国の4カ国・地域向けには、観光動画の配信などデジタルマーケティングを強化。欧米の富裕層も意識し、雲仙や五島列島などを舞台に自然や文化を体験する「アドベンチャーツーリズム」の商品を造成する。これらの関連経費1億1400万円を新年度予算案に計上した。
 「これからがインバウンド回復の本番」。長崎市の宿泊施設関係者はこう期待を示す一方、従業員や貸し切りバスがコロナ禍を経て不足していることから「懸念は多い」と漏らす。さらに、長崎港と佐世保港では、国際クルーズ船の寄港再開を目指し準備が進んでおり、訪日客の需要を取り込む受け入れ体制の整備が急がれる。


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