山登りでのちょっとした失敗談…トイレ問題と水問題は表裏一体 あのキュウリ問題の解決策とは!?【ふくいのそと遊び】

厳冬期が山登りの一番楽しいとき=福井県大野市の荒島岳
水は積極的に担ぎましょう。持ち上がる量は自分と相談を!
ウオッシュレットまで備えた白山室堂のトイレ。山小屋のトイレには入るのに勇気がいるものもありますが…

山登り、楽しんでいらっしゃいますか?

私は今が一年の中で最も楽しい冬山の時期です。 1月から2月は強い冬型の気圧配置が比較的長く続く「厳冬期」。 この厳冬期に標高の高い山に登ることが私の喜び、歓び、悦びです。

  さて、今回のテーマは「山登りでつらかったこと」。山についてはいつも饒舌な私ですが、このテーマを与えられたとき、ふと口をつぐんでしまいました。

つらかったこと・・・??

どんな山でもひぃふぅ息を切らしています。 時として死と隣りあわせの瞬間が続いたり、厳しい局面と寒さに身も心も震えたこと多々です。 でも、つらかった山行を思い出そうとしても「つらかった」ことが思いつきません。

困ったなぁ。

そこで、山での反省点、とくに低山においての気楽な失敗を考えてみることにしました。

夏場のキュウリは塩もみか浅漬け

サンドイッチは手軽につくることができて(なんたって挟むだけ)美味しくて大好きです。 ただ、ぺちゃんこに潰してしまっては食感がそこなわれるので、山での持ち運びには気をつかいますよね。 小さなロールサンドにしたら携行性もよくなるのではと思い、ハムチーズ、ジャム、キュウリ、それぞれのロールサンドを持っていったときのこと。 ハムチーズやジャムは美味しい、まちがいない。でもキュウリは。スティック状にカットしたキュウリをロールしていったのですが、夏山の暑さでキュウリがしんなり・・・というより色も悪くグニャグニャになってしまっています。それでも一つ口にいれたのですが、やっぱり変な味。仕方なしに残りは下山して帰宅するまで、ずっと持ち運ぶだけのものになりました。

ではキュウリは山に向かないかというと、もちろんそんなことはありません。

  あっさり浅漬けにしたものは爽やかでとっても美味しくて、日帰りの山だと傷むこともまれです。 一口サイズにカットしたものももちろん、くし刺し一本もぜひおすすめしたいです。

同じサンドイッチでも、薄切りにして塩でもんでおいたりすれば早々に傷むことは避けられたと思います。

トイレはがまんしない

山でのトイレ問題は女性にとっては切実です。 でもトイレをがまんするのは止めましょう。

山に登りはじめて間がないころ「トイレに行きたい」の一言がいえず、山行の後半は黙り込みがちになり、疲れがピークに達しているのかと無用な心配を周囲にかけてしまっていました。いまはあっさりと申し出ています。初々しかったあの頃がなつかしい。

トイレをがまんすることは、水分補給を控えがちになることと背中合わせ。登山中は日常生活では考えられないほどの量の汗をかきます。しかも長時間にわたってかき続けます。カラダにしてみれば「一体なにごと!」な状態です。喉がかわいたと感じるよりも先に先に、水分を補給するようにしてください。もちろん、汗とともにミネラルも排出されてしまいますから、塩分をはじめとしたミネラル補給も同時に心がけなくてはなりません。

登山のあと数日、ひどい浮腫みにおどろかれた経験はありませんか?

その原因のほとんどは水分摂取不足といわれています。 急激な水分不足に危機を感じたカラダが、細胞レベルで必死に、水分を中に中に抱えこもうとするのだそうです。

十分な水分補給のためには、トイレをがまんしないことと、それだけの水分を確保することがポイントです。

まず、水分の確保について。 自分が必要なものは自分で持ちあがるのが山の大原則。夏でしたら、日帰りの一日の行程で1.5L~2Lは必要です。重いですね。でも山をたのしむには重い荷物をはこぶことを避けて通るわけにはいきません。積極的に担ぎましょう。

ですが、重荷を背負う備えができていないのに、無理やり「水は1.5L~2Lと聞いたから!」と荷物を増やして山に向かうことも危険です。いまの自分を知りましょう。今は軽荷でないと丸一日歩くことができないなら、水場がある山・ルートを選んだり、そもそもの目的地を再考することもたいせつです。

そして「がまんしない」を実現させるためにはどうしたらよいでしょう。

私は、なによりもリーダーや同行者の理解と関係性だと思います。

日常生活においては「トイレ」と直截的なことばを口にするのもはばかられるものです。ですが、山においては、摂食や排せつ、月経といった生理現象を直視しなくてはなりません。

ヒトとしての生き物であることと真っすぐに向き合いましょう。恥ずかしいことでも、ことさらに笑ってごまかす類のものでもありません。

行動中、「空に雲が出てきた→天気の急変はないか」「道がずいぶん荒れている→ルートをまちがえている可能性はないか」。そんな刻々の状況の変化への対応と同じです。天候やルート取りといった外的なものへの対応と同様、身体の要求・変化への対応です。

【登山口や山小屋に設置されたトイレは有難く利用】 自宅や設備のととのったサービスエリアのトイレとは状況が異なる場合がおおいですが、ぜひとも利用しましょう。 ちょっと入るのがためらわれるようなとき、私は、ネックゲイターにミントオイル(虫除けとして携行)を1プッシュして鼻と口元を覆い、目は可能なかぎり薄目にしています。 このミントオイルを振りかけたマスク方式は、かなり誤魔化せるのでおすすめです。

管理清掃してくださる方々への感謝を忘れずに、チップ制のところは積極的に参加賛同しましょう。

【やむを得ない!山で!の場合】 登山前に用足しを済ませてから入山し、山では「しない」が大原則。 ですが、やむを得ない場合もあります。 この場合、かならずリーダー・同行者に声掛けします。 登山道からすこし逸れた適所をさがしましょう。沢や水辺近くは絶対に避けてください。水際から20~30mは離れます。水場の上流はもってのほか。雨水で流出することのないような場所=植物が生い茂っていて落ち葉が堆積したところを選びます。

使用した紙は必ず持ち帰ります。 「大」のときは持参したスコップで埋めることができる程度の穴を掘り、土をかけます。

女性は慎みから、登山道から離れて奥深くへと隠れようとすることが多いですが、離れすぎるのも滑落や動物と遭遇する危険があります。他の登山者が近づいていないか、同行者にすこし離れたところで見張り役をお願いしましょう。そして女性も男性も、かがみこむ態勢をとるまえに、必ずストックや足先で、その場の草むらを払いましょう。これはマダニや蛇対策です。

 

忘れ物をしない、登山の前日は早く寝る等、基本的な気をつけたいことはたくさんありますが、ひとつひとつの山行で必ずでてくる気づきと反省を積み重ねていけたら、それが目標とする挑戦的な山行の成功のもとにつながるのだと思います。

三寒四温のころ、日によっては明るい日差しが春の訪れを実感させてくれますね。 今月もどうぞ、日々の顧みを積みかさねながら、無事に帰ってこそ登山!を旨に安全登山をたのしんでくさい。

(登山用品店「遊山行」=福井県福井市田原1丁目8-2 服部佐和子)

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