コーヒーと昭和の香り レトロ飲食店を訪ねて 宇都宮・まちなか

明石庄作さん作の益子焼カップで提供されるコーヒー

 ここ数年、若者を中心にレトロブームが続いていますね。昭和の香りが色濃く残る飲食店も再評価され、都内では有名喫茶店に若い女性が行列を作り、町中華店に若者の姿が多く見られるようになりました。そこで今回は、街なかで営業を続ける老舗喫茶店を訪ねます。

 1990年代ごろまで、街なかには喫茶店がひしめき合っていた。近年は大手カフェチェーンの進出や店主の高齢化による廃業などで、表通りからはその姿を消した。しかし一本路地に入れば、今でもコーヒーの香りが客を出迎えている。

■釜川を眺めながら

 釜川沿いのビル2階に店を構えるれんが風の外観が印象的な喫茶店「朴花(ぼっか)」(曲師町)は1989年からこの場所で営業している。店内はカウンターとテーブルの計13席。大きな窓から光が差し込み、テーブル席からは釜川を眺めることができる。本棚には常連客が置いていったというマンガが並び、ゆっくりとくつろげる雰囲気だ。

 店主の岩野桂子(いわのけいこ)さん(78)がサイホンで入れるコーヒー(400円)が看板メニュー。コーヒーカップや小皿は親交のある益子焼の陶芸家明石庄作(あかししょうさく)さんの作品を使い、手仕事の温かみを感じられる。

 最近は釜川沿いの散策を楽しむ若い一見客の来店も多いという。「よくレトロですねと言われるんだけど、『やっている人間もレトロですよ』と返すの」と笑う岩野さん。元気なうちは“自分の書斎”だと思って店を続けていくそうだ。

■週末は県外からも

 アダルトな雰囲気漂う路地裏でひっそりと営業を続けているのが「純喫茶サンバレー」(池上町)だ。1968年の開店で、現存する街なかの喫茶店としては屈指の歴史を誇る。

 表に「営業中」の札は出ているが、外から中の様子をうかがうことはできない。勇気を出して扉を開けると、昭和で時が止まったかのような空間が広がる。店内の照明はかなり落とされ、茶色に変色した壁が店の歴史を物語る。カウンターや内装は円形で統一。レトロモダンな印象も受ける。

 ホットコーヒー(400円)を飲みながらママの細島(ほそしま)エツ子(こ)さん(82)に話を聞いた。創業当時は常に満席状態で、近くに喫茶店が乱立したそう。バブル崩壊で客足は落ち着き、周辺の喫茶店も一軒また一軒と閉店した。そんな状況にも「地味な性格で、地道に頑張ったから続けられた」。近頃は喫茶店好きの間でちょっとした有名店となり、週末には東京や仙台など県外からも若者が訪れるようになったそうだ。

明るい雰囲気の朴花
サンバレーのカウンターに立つ細島さん
純喫茶サンバレー

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