「大河はチャンス」闇夜にきらめく歴史絵巻…家康公の偉業をプロジェクション 静岡の企業が手掛ける

ドラマ放送で高まる家康公人気

幼少期に人質の身分でありながら時の名将、今川義元から帝王学を学び、世界でもまれな平和国家の礎を築いた徳川家康公。彼の生涯を描いた大河ドラマの放送で、全国から静岡市に注目が集まりつつあります。

【写真を見る】「大河はチャンス」闇夜にきらめく歴史絵巻…家康公の偉業をプロジェクション 静岡の企業が手掛ける

先日、静岡浅間神社(静岡市葵区)の中に、ドラマ館がオープンし、その杮落としに建物を使ったプロジェクションマッピングが披露されました。今後、数多くのドラマファンが訪れることが予想される施設へのプロジェクションマッピングは、実は地元・静岡市の会社が担当しています。歴史絵巻の世界観を伝える大役を、この会社はどのように果たしたのでしょうか。

ドラマ館に投影されるグラフィック

投影設備を独自開発し低コスト化に成功

「建物などを表現の『キャンバス』にするプロジェクションマッピングは、見る人に強いインパクトを与えますが、ハード、ソフト、運営ともにコストが高いんです。今回は自治体が負担できるであろう金額に収めるためには、どうしたらいいかが最大の課題でした」とシステム企業「リバティー」(本社:静岡市)みらい事業部の後藤理佐部長は説明します。

静岡市からの発注を受けたのが2022年11月。そこから映像の投影に使うプロジェクターを収納する設備と動画の製作をスタートさせました。使用するプロジェクターは最大輝度5,000ルーメン。大きな会議室などで使用するビジネス用です。

同社は鉄柱の上に雨風をしのげる箱を取り付け、その中にプロジェクターを収めました。取引先の看板製造会社の協力を得て、同社で独自に開発したということです。できるだけ景観を邪魔せず、中のプロジェクターが通年作動するように工夫を重ねたと説明する後藤部長。2022年、静岡市内で実施したプロジェクトから得られたノウハウをつぎ込んでいます。

一時は料理人になる覚悟も…ビジネス化で社員の能力開花

「映せる部分が少ないので焦りました」動画制作を担当した同部の荻原裕也さんは、現場を確認して頭を抱えたといいます。「手前に木はあるし、屋根の色は暗く、光を上方向に逃してしまうような角度までついていたんです」大学で動画製作やプロジェクションマッピングを学び、実際の食パンに映像を投影する卒業作品を制作したほどの荻原さんは知恵を絞ります。

「3D映像は映えにくいので、鮮やかな2D映像を多めにして、あえて木や池にも投影するようにしました。幸い神社敷地内なので外から入ってくる光が少なく、建物の凹凸をうまく生かした動画ができました」。投影を鑑賞した観光客は、概ね満足した様子だということで「流している音にもっと迫力がほしいという意見が多いのでそこが改善点かな」と話しています。

動画制作の能力を買われて新卒で入社した荻原さんでしたが、当初、社内にこうした仕事のニーズはなく、数年間、関連の宿泊施設の調理場で盛り付けの仕事をしていたといいます。「実は、料理人になる覚悟まで決めていたんです。設備から動画まで内製することで低コストでのマッピングが可能になったので商業化に目処がつき、私も学んだことを生かせるようになりました」と満足そうです。

静岡市の観光振興に光を当てたい

季節の変化やドラマの進行具合などに合わせて、同社は合計5パターンの動画投影を予定しています。後藤部長は「ドラマの放送は静岡市の観光振興にとって大きなチャンス。今回のプロジェクションマッピングが、誘客の一助になれば観光施設のコンサルティング業務も行っている当社にとってもメリットが大きい」と話しています。

© 静岡放送株式会社