コロナ後遺症の悩み相次ぐ 長期化する症状、周囲の理解不足... 県センターに相談613件

新型コロナの後遺症の診断書を手に取材に応じる女性=2月上旬、栃木市内

 新型コロナウイルスの感染後、倦怠(けんたい)感や息切れなどの後遺症に悩む人が相次いでいる。栃木県が昨年10月に設置した「コロナ後遺症相談センター」には、今年2月15日までに613件の相談があった。当事者からは長く続く症状への心配や、周囲の理解不足に対する不安の声が上がる。専門家は「後遺症に悩む人はさらに増える恐れがある」と指摘し、相談体制の充実の必要性を訴える。

 朝、布団から起き上がることができない。せきが止まらなくなる-。栃木市、会社員女性(53)は、約1カ月にわたり倦怠感や息苦しさに苦しんでいる。

 1月上旬にコロナに感染。自宅療養期間が過ぎても微熱や倦怠感が続いたため、かかりつけ医を受診し、後遺症と診断された。

 事務の仕事は通勤が困難で休まざるを得なかった。コロナに感染した同僚はいたが、問題なく復帰していた。「職場に症状を理解してもらえているかが心配。長く休んで迷惑を掛けるし、こちらから辞めると言った方がいいのか」と悩む。

 茨城県、会社員女性(55)は昨年8月中旬から倦怠感が続く。身近に相談できる医療機関がなく、小山市のおぐら内科・腎クリニックを受診した。

 会社は在宅勤務を増やしてくれたが、背中に重い物を背負わされているような疲労感を断続的に感じる。「これほど長引くとは思わなかった。いつになったら元の暮らしに戻れるのか」と女性は悩む。

 後遺症は新型コロナに感染し、療養を終えた後に現れる症状全般を指す。時間とともに大半が改善するとされているが、現れる仕組みは不明な点が多い。

 県に寄せられた相談は女性が335件で男性より約60件多い。40代が107件と最多で、30代が93件、20代83件と続く。症状は「せき」が156件、「倦怠感・疲労感」が145件、「頭痛」が84件などだった。

 同クリニックの受診者も20~40代の女性が多い。精神的な落ち込みや全身の倦怠感が中心。集中力や思考力が落ちる「ブレインフォグ」と呼ばれる症状が出て、仕事を辞めざるを得なかった30代患者もいた。

 小倉学(おぐらまなぶ)院長(46)は「後遺症は誰でも起こり得る。働き盛りに多く、社会的な影響が大きいが、特効薬のようなものはない」。症状に応じてカウンセリングや投薬治療を行っている。

 県がホームページで公表している県内の後遺症相談対応医療機関は63機関あるが、小倉院長は「相談できる医療機関をさらに増やす必要がある」と指摘した。。

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