定年後には難しくなる事務職への転職。幸福な生活を送るために必要なこと

会社からは「再雇用」の提案があったけれど、給与はほぼ半減、役職もなし、部下もなし。モチベーションが下がって、転職も考えてみたが「求人がない」。

「もうオレは必要のない人間なのかな?」なんて、定年が間近に迫ってきてそんな愚痴を言ってしまいたくなる…。しかし、そんな考えでは、定年後の生活は面白くありません。定年といっても、まだ5〜10年は働き続けることになるのですから。

それどころか、そんな愚痴をずっと言い続けていると「老害」なんて言われてしまいます。今回は、定年後の幸福な働き方について考えてみましょう。


50〜60代にとって事務職は、狭き門になる

20〜40代に比べて、50〜60代の求人数はグッと減ります。当然、50代・60代の転職は厳しくなります。転職が厳しいひとつに、高齢の求人者は、事務職を希望されている方がとても多いことが挙げられます。

しかし、現実には事務職は30〜40代など、現役世代の人が求められます。エクセルやパワーポイントなどで書類を作成するとしたら、ある程度パソコンを使いこなせるスキルが必要だからです。そのためパソコンなどが苦手な高齢者を雇用することは、難しくなります。

総務省「国勢調査」(2015年)をみると、就業者のうち事務職の仕事をしている人は、50〜54歳では、23.2%ともっとも多いのですが、50代後半以降は、急速に下がっていきます。60代前半は16.1%、70代前半は、9.1%になっています。管理職は40代以降に増えますが、60代後半では5.2%、70代前半は6.2%です。おそらく中小企業に勤めていた事務職の人が管理職になり、そのまま仕事を続けているのだろうと思いますが、それはやはりごく一部の人に限られます。

では、実際に高齢者の多い職業はというと、農林漁業、運搬・清掃・包装など、生産工程、サービス職業、販売などです。つまり、現実には事務職よりも現場仕事が多くなるわけです。

専門のスキルが身につきにくい日本の雇用制度

さて、同じ会社でずっと働いてきたが、専門のスキルを身につけられなかった人も少なくないでしょう。これは日本の雇用が、新卒一括採用、年功序列などのメンバーシップ型が中心だからです。会社の中では、ジョブローテーションにより数年間で職場が変わっていきます。営業部で2〜3年働き、そして次は総務部、また数年して広報部などと違う職場を転々と変わっていきます。そのためなんでも仕事はこなせるようになるものの、専門的なスキルは身につきづらいのです。それでも管理職までいければいいのですが、それはごく少数の人だけです。その他の人は、そのまま定年を迎えます。

転職において、「仕事は何でもできます」というふうにアピールしたとしても、そういう人はいくらでもいるのが現状です。専門のスキルなどがあると強みになるのですが、「何でもできる」が通用しないのはおわかりになると思います。また、事務職などを希望したとしても、前述の通り求人は少ないので、希望通りに転職するのは難しくなります。結局多くの人は、事務職以外の職種に就くことになるのでしょう。

人の役に立つ仕事が、満足感や幸福感に繋がる

しかし、高齢者の求人が、まったくないと言うわけではありません。条件を限定しなければ、求人は決して少なくないのです。たとえば介護職員などは、求人をしても集まらないという話を聞きます。管理人などの仕事も同じです。

これらは、事務職ではありません。現場の仕事になります。しかし中高年など、会社のなかでコミュニケーション力を培ってきたはずです。管理職の仕事では、まさに管理能力が問われますし、交渉ごとの経験もある方が多いと思います。現場の仕事では、人と人のふれあいが中心になるので、コミュニケーション力はとくに必要になってきます。

また、人の役に立っていることを実感できるのも現場仕事のいい面でもあります(もちろん、嫌なこともあるかも知れませんが)。人の役に立つとか、人から必要とされることが、何よりも働きがいにつながるのです。そういう仕事に就いている人の満足感や幸福感が高いというアンケート結果もあります。

以前の肩書きを捨てることがスムーズな再スタートに繋がる

いずれにしても自分は「○○会社の部長だった」という意識を、できるだけ早く捨てることが重要です。気持ちを切り替えることができれば、スムーズに再スタートすることができます。

しかし、なかにはうまく意識を切り替えられずに周りから避けられてしまい、いわゆる「老害」と言われるような方もいます。でも、それでは人生楽しくはありませんよね。幸福感に満ちた老後生活を送るためにも、ぜひ気持ちの切り替えを心がけてください。

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