「加速する人口減少」長崎県の活動維持、かじ取り難しく <検証・大石県政 就任1年②>

長崎県の担当者(手前左)に高校生までの医療費助成制度の充実を求める女性団体=県庁

 「若い世代にとって家庭の医療費負担は大きい。子どもの健全な発達を促すためにも、いつでもどこでも安心して医療を受けられるよう願ってやまない」
 今月10日、長崎県内の女性団体は、大石賢吾知事肝いりの高校生までの医療費助成制度の充実を県に要望。その3日後の記者会見で知事は正式に制度創設を発表した。
 県は現在、県内21市町が助成する乳幼児医療費の半額を負担。うち9市町は独自に高校生まで、12市町は中学生まで助成している。新年度からは県の助成で、県内一律で高校生まで医療費の負担軽減が図られる。具体的には1医療機関当たり自己負担の月額が1600円に抑えられる。
 知事の狙いはこうした子育て支援策を強化し、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」について「2」(2021年は1.60)を目指すことだ。本県は人口減少が加速し、推計で既に130万人を割り込んだ。年間出生数も減少し、21年は8862人。県は「2」実現には年間2300人程度増やす必要があるとするが、ハードルは相当高い。
 県政に詳しいある関係者は「医療費助成は少子化対策の一つにすぎず、これで人口減少に歯止めはかからない。もっとさまざまな手を打たなければならないが、知事が積極的に語っている印象はない」と言う。別の関係者も「(当初予算約7500億円のうち人件費といった義務的経費などを除けば)知事が自由に使える新規政策予算は年間十数億円しかない。その中で高校生の医療費助成の約3億円は今後固定化するため、他の政策の幅が狭まってしまう」と指摘する。
 一方、地元経済界は人口減少に伴う人手不足の深刻化を懸念。総務省の22年人口移動報告によると、県外転出者が県内転入者を上回る「転出超過」は全国ワースト7位の5219人。県も移住対策などに積極的に取り組んでいるが、それを上回る規模で人口が流出。特に若い女性にその傾向が強い。
 最近は地域活性化が期待される企業誘致も相次いで決まっているが、人手不足の現状では別の側面も指摘される。昨年12月、京セラ(京都市)が26年をめどに諫早市内で半導体関連の新工場を稼働させると発表。地元雇用を含め千人程度の人員を想定している。半導体関連産業を育てたい県は歓迎の意向を示したが、別業種の地元経営者は「給与など待遇面は大企業にかなわない。人材を採られてしまう」と心配する。
 国の総人口はライフスタイルの変化もあり長期の減少過程に入っており、九州経済調査協会は本県の50年の人口が約83万6千人にまで落ち込むと推計。パイの縮小を抑制しながら、地域の社会経済活動をどう維持するのか。知事は難しいかじ取りを迫られている。


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