「将来的にはスーパーGTにも進出できれば」KCMGがスーパー耐久復帰。イップが語る日本でのレース活動

 2月23日に静岡県の富士スピードウェイで行われたスーパー耐久シリーズの公式テストに、2023年シーズンのST-Xクラスに参戦を表明しているKCMGが参加した。

 全日本スーパーフォーミュラ選手権で長年活躍しているチームとして有名なKCMGだが、コロナ禍以前はTCRジャパンシリーズやスーパー耐久にも参戦を行っていた。

 そんなKCMGは、2020年シーズンもホンダNSX GT3を使用してST-Xへのエントリーを予定していたのだが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴う入国規制の影響により主要ドライバーの来日目処が立たず、参戦を断念することになっていた。

 迎えた2023年シーズンは入国規制も緩和されつつあることもあり、2020年に叶わなかったST-Xへのレギュラー参戦に再度挑戦する運びとなった。

スーパー耐久富士公式テストに参加したKCMG NSX GT3

「日本のレースに出場するのは2019年のTCRジャパン以来だ。こうして日本に戻ってきてレースに参戦できることを喜んでいる。日本にいるチームのメンバーをはじめ、スーパー耐久ファミリーのみんなに再会できて本当にうれしい」

 そう語るのは、KCMGのチームオーナーであり、自身もAドライバーとしてNSX GT3のステアリングを握るポール・イップだ。彼は以前から日本のレースに積極的に挑戦しており、スーパー耐久やTCRジャパン、さらにはインタープロトシリーズにもスポット参戦した経験を持っている。

「スーパー耐久に関しては、2019年はST-TCRクラスに参戦して、2020年はNSX GT3で(ST-Xに)参戦する予定だったけど、新型コロナウイルス感染拡大の影響で入国制限が厳しくなり、スーパー耐久への参戦を諦めなければならない状況だった。でも、幸いなことに現在は入国規制が緩和されたので、再びスーパー耐久に挑戦する機会を得たんだ」

「何よりうれしかったことは、スーパー耐久の人が僕たちのことを覚えていてくれて、再びこのシリーズに快く迎え入れてくれたことだよ。その部分については本当に感謝している」

 コロナ禍により、日本でのレース活動を思うように発展させることができなかったKCMG。だがイップは、入国規制が緩和されたことを機会に、再び日本でのレース活動に力を入れていきたいと語った。

 イップは「我々は日本のモータースポーツを重要視している。みなさんもご存知のとおりスーパーフォーミュラに参戦しているし、今年からスーパー耐久のプログラムも再開することができた。個人的な思いとしては……、将来的にはスーパーGTにも進出できればいいなと思っている。それがいつか実現することを望んでいる」と今後の展望についても明かした。

スーパー耐久富士公式テストに参加したKCMG NSX GT3

■テストはNSX GT3×ハンコックを含め「すべてが新しい経験」

 今回のスーパー耐久富士テストにはイップをはじめ、レビュラードライバーのホー・ピン・タン、マーチー・リーもテストに参加。未塗装でカーボンむき出しのホンダNSX GT3で精力的に周回を重ね、日中の3セッション合計で74周を走行し、1分40秒559というベストタイムでST-Xの4番手につけた。

「3セッションのテストは無難に走り切れたと思っている。ただ、NSX GT3にハンコックタイヤを履いて走らせるという経験は僕たちにはないし、新しいドライバーもいる。メカニックも含め、この体制で全員が一緒に仕事をすることは今回が初めてなんだ。すべてが新しい経験だったから、ひとつひとつ学びながらテストを進めていった。そのなかでの収穫も多く、良いテストになったと思っている」とイップ。

 また、近年のスーパー耐久では、シリーズ一番の長丁場戦となる富士SUPER TEC 24時間レースに助っ人となるドライバーを起用するケースも多い。すでにKCMGはエドアルド・リベラティの起用を発表しているが、そのほかのドライバーが加わる可能性もゼロではないようで「5人目が必要かどうかについては今議論しているところだ」という。

 FIA-GT3車両で争われ、毎戦熾烈を極めるST-Xクラスに参戦するKCMG。2023年シーズンに向けてイップは「まずはアクシデントなく各レースを戦い抜きたい」と意気込みを語った。

「ST-Xはすごくレベルが高いので、そこで好結果を残していくのは簡単なことではない。とにかくベストを尽くしてどうなるか見てみたいと思う。以前はST-TCRに参戦していたけど、今年はGT3に移ることになるので、ドライビングという面でも難しくなると思っている。しっかりと経験を積んでから本番に臨みたい」

 さらに、イップにとって日本のコースを走ることは久しぶりということもあり、各サーキットを走るのが楽しみで仕方がない様子だ。

「日本にはさまざまな特徴を持ったサーキットがある。富士は広くてスピード域も高いコースだし、鈴鹿は伝統的なコースだし、もてぎはブレーキングのスキルが求められるコースだ。どのサーキットも特徴的で、その場所でまたレースができることはすごく楽しみだよ。強いて言うなら、富士と鈴鹿が特に楽しみだね!」と笑顔をみせていた。

スーパー耐久富士公式テストに参加したKCMG NSX GT3

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