よゐこ有野、金融のプロが明かす資産形成のコツにショック「早く始めておけば…」

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年2月は金融教育家の塚本俊太郎先生に、投資の基礎知識について、タレントで元「アイドリング!!!」14号の酒井瞳さんと一緒に学びます。

今回は、「資産形成で重要なキーワード」について伺いました。3つあるといいますが、皆さんはわかりますか?


有野晋哉(以下、有野):芸人には売れるための7ヵ条があるって、32年前の養成所に来てはった作家さんが教えてくれてんけど、資産形成でも重要な3ヵ条があるのか。う〜ん、なんやろうな、損したくないとかは自分の気持ちやしなぁ。

酒井瞳(以下、酒井):え? 有野さん、資産形成の重要なキーワードより、先に芸人さんの売れるための7ヵ条も聞いてみたいです。

有野:7ヵ条? 養成所に居てた先輩は3つ分かるっていうてはって、「一個教えたるわ、可愛らしさやで」って。なるほどな〜って。

酒井:あと、6つは?

有野:1つもわかれへんねん。

酒井:わからずに続けてるんですか、それはそれで凄いですね……。

有野:だから、不安で不安で。そんな事より、今は芸人7ヵ条より資産形成の3つのキーワードの方が大事やねん。

酒井:そうですね、3つのキーワードを探しましょう!

塚本俊太郎(以下、塚本):さて、前回は数多くある投資信託の中で、まずは株価指数と連動する「インデックスファンド」で全世界の株式に投資する「全世界株式型ファンド」への投資を選べばOKというお話をしました。

酒井:全世界株式型って、本当に世界全部の企業に投資しているんですか?

塚本:そうですね。全世界とは先進国だけでなく新興国も含まれていて、全部で約2,800社の株式に投資します。当然、日本企業の株もその中に入っています。

有野:でも、日本って、人口が減少してて高齢化が加速して将来は成長を続けるのは難しいって言われているんじゃないですか?

塚本:おっしゃる通りです。ただ、仮に1つの国や地域が成長しなかったとしても、世界全体で見れば高成長の国が引っ張る形で成長を続けます。全世界株式型ファンドを買うことで、「世界全体の成長」の恩恵を受けることができるわけですね。

有野:なるほどなぁ。高成長の国が引っ張る形に当てはめると、芸能事務所に100人のタレントがおって、定期的に売れっ子が出るって感じかな。最近の松竹芸能はなすなかにしとヒコロヒーが引っ張ってるね。その恩恵を受けて仲のいい先輩として番組に呼ばれたりする。それを世界全体にはめると、他事務所やけど、仲のいい芸人として呼ばれたりする。後輩は可愛がっておくべきやね。あ! これって芸人が売れる7ヵ条の2つ目かな?

酒井:話が脱線しすぎです(笑)

資産運用は20年レベルの長期で考えることが重要

塚本:資産形成において、最も重要なポイントはなんだと思いますか?

酒井:いい投資信託を選ぶこと……でしょうか?

有野:そのためにも重要なポイントは、投資のプロの顔を見て決める!

酒井:また顔の話してる(笑)

塚本:酒井さんのおっしゃってることも間違いではありませんが、もっと資産形成の根本的な部分についてのポイントですね。キーワードは3つあって、「長期」「積立」「分散」です。

有野:あっ、前の授業で山中先生に習ったやつ! ちょこちょこウロウロしないで、じっと待つ。それが元本割れリスクを下げるやつ。

酒井:さすが学級委員、よく覚えてましたね!

有野:そやねん、決めるとこは決めるねん。

酒井:元は塚本先生が答え言ったので、それを山中先生に教わった事を思い出しただけで、答えとしては遅いですよ(笑)

有野:なんて的確なこと言うねん。バラエティとかで「言うと思った〜」っていう女性タレントと同じか。そう思ったんやったら言えばいいのに、こっちは勇気出して言うてるのに、言うてから「言うと思った〜」やて、やかましいわ! って、アレと同じか。あ、芸人の7ヵ条の3つ目は、ボケる勇気やな。

酒井:またそこに戻る(笑)

塚本:そろそろ本題に戻ります(笑) さて、最初のキーワード「長期」に関しては、「投資」についてのお話の部分で少し触れました。長期にわたって投資を続けていると、複利の効果で、結果的に元本割れする可能性を減らすことにつながります。

酒井:長期ってどれくらいですか?

塚本:1985年以降、同じ株式や債券を5年しか保有しなかった時と、20年保有した時の運用の成果を比べると、5年間では元本割れするケースがありましたが、20年間では元本割れしたケースは一度もなかったというデータが出ています。

有野:ゼロ!? すごい、確実やん! って事は、5年は長期に入らへん。20年で初めて長期ってことか。

塚本:景気には波(サイクル)があって、5年だとそのサイクルの下の部分、つまり景気が悪い時に売買してしまうと損をするケースも出てきますが、20年では景気の波を何回か乗り越えて、結果的にプラスになる可能性が高くなります。

有野:今から20年だと71歳だから、もうおじいちゃんやん。もっと早くから始めておけばよかったわぁ……。

酒井:いまは「人生100年」の時代なんですから、70歳なんてまだまだバリバリ現役でいられますよ!年金がもらえる時期と重なるから、ちょうどいいんじゃないですか?

有野:それやと70歳まで働かなあかんってことやろ? それは嫌やなぁ、早くリタイアして朝から晩までゲームしてたいねん。

塚本:確かに、投資は始めるのが早ければ早いほど有利ではありますが、投資を始めるのに遅すぎるということはありませんよ。

有野:そうか、長い方が良いけど、今から始めても遅くはないのか、昔。テレビで島田洋七さんが言うてはった、「売れる方法はたった1個やねん。辞めへんこと。これだけや」あ!売れる芸人7ヵ条4つ目は、長く続けるやな。

酒井:もしかして、今回の授業の軸にする気ですね?

有野:いやらしい事いうな(笑)

積立投資で市場の波を乗り越える

塚本:続いて、「積立」についてお話しましょう。株式や投資信託など価格が上がったり下がったりする商品は、一括で投資しようとすると下がったタイミングを探そうとして、なかなか投資できません。でも、コツコツと定期的に「決まった金額」を投資する積立投資なら、投資額が順調に積みあがっていきます。

有野:決まった金額じゃないとダメなんですか?

塚本:「安い時に買って高い時に売る」ことができれば、もっと大きな利益を得られますが、価格の底値や天井を見極めるのはプロでも至難の業。同じ金額の積立を続けることで、価格が安い時にはたくさん買えて、価格が高い時には少し買うことになるので、市場の動きに合わせて購入していることになります。市場の波を乗り越えることにつながりますね。

塚本:このように、時間を分散して積立をしていく手法を「ドルコスト平均法」と呼ばれているのですが、この手法は長期の資産運用において大変効果的です。

酒井:ドルコスト平均法……単語だけ聞くと難しそうですね。

有野:動物園に居てそうな名前やな……頭のこぶが非常に発達して噛む力が強いドルコストゴリラです。ドルコストチンパンジーは暖かい国からやってきました。あと、ドルコスト何かな?

酒井:ドルコストに合う動物大喜利やめてください! ドルコスト平均法ですよ。

有野:わかりますよ。簡単に言うと、推しのアイドルが居て、推しのグッズを買うとしたら、お金を1年貯めて生誕祭の時に12万円分買うよりも、毎月決まった額の1万円分買う方がいいって考えでしょ。だって、生誕祭グッズは誕生日月が過ぎたら値引きされるから、たくさんのグッズが手元に来る。人気がない時はたくさん手に入るから、額を平均にして買ったほうが手元に多く残る、って事でしょ? ね、「アイドリング!!!」14号の酒井さん。

酒井:う〜ん、先生合ってますか?

塚本:ちょっと、推し活のことはわかりませんが(笑) 手元に多く残る、という意味では間違えてないと思います。最後の「分散」については、1つの金融商品だけに集中して投資せず、価格の動きが連動していない複数の商品に投資する「資産の分散」、違う地域や複数の通貨に投資する「地域の分散」という“2つの分散”を心がけると、より値動きをおさえることができますよ。

酒井:あれ? 「全世界株式型」では、全世界の株式に投資するんですよね?

有野:ほんまや。じゃあ全世界株式型の投資信託を選べば、「地域の分散」はできてるってことですか、先生?

塚本:おっしゃる通り、投資信託には複数の金融資産や地域への分散投資をファンド1本で可能にするというメリットがあります。もう1つ、資産を日本円だけで保有していると、日本に何か悪いことが起きた場合のダメージが大きくなるので、資産を米ドルなどの日本円以外の通貨に分散しておくことも大切です。

有野:おっしゃる通り!

酒井:なんで有野さんがそれ言うんですか!

有野:いっぺん言うてみたかった。ってことは先生、投資信託は1本で2度おいしいわけですか。それにしても、3つのポイントに2つの分散、全部で5個も覚えんとあかんわけか~、厳しいなぁ。

酒井:格闘ゲームとかホラーゲームのほうが、ボタン操作とか技のコマンドとか、よっぽど覚えたりすることが多いですし、5個くらい楽勝ですよ!

有野:分かりやすい、楽勝やな! 5個って事はスーパーファミコンのABXYボタンに人差し指のLRボタンより少ないな。いや、それ難しいわ……学級委員長的にというか、課長はファミコンのABボタンが限界やねん。だから、2個におさえさせて欲しいです。なので、僕は「分散」と「ドルコストゴリラ」の2本柱にします。

酒井:全然分かってない(笑)

コツコツと投資を続けながら知識と経験を身に着ける

塚本:ここまで資産運用の必要性とやり方について駆け足でお伝えしてきましたが、いかがでしたか?

有野:100%理解できたとは言えませんが、51歳でも遅くはなくて、早く投資を始めた方がいい、ということはわかりました。

酒井:私も、有野さんと同じ気持ちです。ゆっくりしている時間はないんだなって。

塚本:資産運用は「将来」の生活に向けた備えですから、慌てて始める必要はありません。ただ、現在はNISA(小額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)のような投資の優遇制度がありますから、始めやすい環境が整っているのは事実。なので、小額でもいいから、まずは始めてみることです。実際に始めるといろいろ気にかかるようになって、情報を集めたり、勉強しようという気になったりしますから。

酒井:NISAは前の授業で教わりましたし、とりあえず口座は開設しました!

有野:おぉ、進んだな! まだ投資のプロの顔とか、わかってないところも多いですけど、とりあえず投資信託を少しだけ買ってみました。

酒井:えっ、そうなんですか? 聞いてないんですけど!

有野:なんで酒井ちゃんに全部言わなあかんねん(笑)

酒井:何を買ったかだけこっそり教えてくださいよ。

有野:嫌です(笑) だいたい自分の大事なお金なんやから、ちゃんと自分で決めなあかんで……お、なんかちょっと、学級委員っぽくない?

塚本:有野さんのおっしゃる通りですね。投資はあくまで自己責任。他人の言うままに投資をして、損をしてしまったら納得できないでしょう? 自分で金融商品の特徴やメリットを知って、リスクとリターンのバランスを考慮しながら、コツコツと投資を続けつつ、知識や経験を積み重ねていくのがいいと思います。

酒井:そうですね……よし、ノートを読み直して復習して、何に投資するかしっかり考えます!

有野:僕も芸人の売れる7ヵ条、頑張って探します!

酒井:まだ言ってたんですか(笑)

塚本:さて、今回で私の授業は終了です。これからも資産運用について、ぜひ勉強を続けてくださいね。

有野酒井:ありがとうございました!

3月からは、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほ( @mizuho_iwaki )先生をお迎えし、「家計改善のコツ」を聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

酒井瞳
1989年5月3日生まれ。宮崎県出身。2008年4月に女性アイドルグループ「アイドリング!!!」に14号として加入し、2015年10月に卒業。その後は地元・宮崎県に関わる活動や、テレビやドラマ、YouTubeなど活動の幅を広げている。2022年2月よりジムでパーソナルトレーナーを開始。また、同年に故郷の宮崎県延岡観光大使に就任。 アイドル専用ジム「iウェルネス」ではトレーナーとしても活動している。

塚本俊太郎
金融教育家、日本CFA協会執行理事。1994年、慶應義塾大学総合政策学部卒、97年に米国シラキュース大学大学院国際関係論修士。同年、UBS信託銀行に入行し、債券運用部ファンドマネジャーを務める。02年以降、メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズ(現ブラックロック・ジャパン)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど外資系運用会社にてストラテジストや投資戦略部長などを歴任。20年、金融庁に入庁し、金融教育担当として高校・大学・社会人向けに授業を行う。高校家庭科での金融経済教育指導教材や、小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当。現在はフリーランスの金融教育家として金融リテラシーや資産形成について発信・寄稿・講演を行う。また、金融教育プログラム構築に関するコンサルティングも実施している。Eテレ「趣味どきっ!」に3月1日(水)21:30から「金育」をテーマに4週に渡り出演。著書『今日から楽しむ“金育” 』(NHK出版)が2月22日(水)発売。

ライター:新井奈央 / 写真:文化工房

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