東日本大震災から12年、現在までの市場の推移と資産形成において覚えておくべきこと

2011年3月11日(金)、前週の米雇用統計の影響もあり株価が軟調に推移するなか、14時46分、東日本大震災が発生しました。当時、筆者は日経225先物の買いポジションを保有していたものの、大引け(取引時間の終了、当時は15時10分)が迫るなか、地震が恐くて取引どころではなかった記憶があります。

資産形成の重要なポイントとして、長期・積立・分散があげられますが、長期で投資を行っていくなかで、天災や戦争など、自分の力ではどうすることもできないことが発生する可能性もあります。


震災後の株価推移と売買動向

2008年9月16日(火)のリーマンショック時は、自民党総裁が福田康夫氏から麻生太郎氏に交代し、自民党政権に明らかに陰りがみえていた時期です。その後、民主党政権に変わったものの、日本の株価はまだリーマンショック前の状態を回復しておらず、アメリカの主要株価指数に比べると、大きく見劣りしていました。

そんな状況が続くなか、突然襲ってきたのが東日本大震災です。リーマンショックから東日本大震災にかけては、日本経済の脆さを露呈した一連の出来事でしたので、当時の日経平均株価を振りかえっておきましょう。

リーマンショックは、世界的な金融危機につながるきっかけとなり、金融システムが崩壊、とくに製造業が大ダメージを受け、日本では政治も停滞していたために株式市場の回復が遅れていました。また為替のドル円では、前年より続いていた円高が、リーマンショック後にリスクオフでさらに加速し、震災後もその流れは変わらず、2011年3月17日(木)には76円台をつけ、日米欧で協調介入が実施されたものの、結局8月19日(金)には75円台に突入しました。東日本大震災後においては、復興対応の遅れや増税をしたことなど、政治の失敗もさることながら、リスクオフや円資金需要など多種多様な要因によって、株安・円高懸念が大きな足かせになったと推測されます。

震災ショックを乗り越えられる事例

資産運用において、東日本大震災のような100年に1度と言われる局面で、どのように乗り切るかの、投資パターン別に紹介します。

ケース(1)先物投資

先物取引でメジャーなものとして日経225先物取引があり、「ラージ」と「ミニ」の2種類があります。ラージは「日経平均株価指数 × 1,000倍」、ミニは「日経平均株価指数 × 100倍」での取引となります。

取引業者によって若干の差はありますが、一定の証拠金を差し入れることで、証拠金の10倍までの取引が可能です。ショック時のように相場変動が大きい場合は、取引単位を通常よりも少なくし、どんなにチャンスだと思っても、無茶な取引を控えることが大切です。

ある程度、長期間ポジションを保有する場合は、より取引単位を小さくすることで、目先の相場変動に振り回されないようにし、短期勝負の場合は、逆指値を設定するなど、うまくいかなかった場合の損切を早くすることも重要です。

また、客観的に冷静にみて相場がより下がりそうな場合は、空売りを実行することも選択肢に入れておくと良いでしょう。

ケース(2)一括投資

このケースは(1)と異なり、レバレッジをかけない現物取引となりますので、瞬間的に大きな損失を抱えるリスクは減りますが、自分の思惑と異なる動きをした場合は、先物取引と同様、早めに損切りするなどのリスク管理が大切です。

また、資金余力がある場合は、まとまった資金を何回かに分割して投資するという手もあります。この場合でも、ナンピン(難平)にならないよう、また塩漬けポジションにならないように、一定ラインを下回ったらいったんは損切りし、またチャンスがくれば買い直すなど、大きな損失にならないような対応方法を決めておきましょう。

ナンピンとは、保有しているポジションがマイナスになった時に、さらに買い増しや売り増しをするなどして、平均単価を有利にする(買いの場合は単価を下げる、売りの場合は単価を上げる)ことです。例えば、2,000円で100株買った銘柄が、1,000円に下がったときに100株買増しすると、100株当たりの平均購入単価は1,500円に下がります。これがナンピン買いです。

株価が上昇トレンドにあるなら、一時的に下がった時に実行すると有利になる可能性の高い投資法ですが、下落トレンドの途中では損失をさらに拡大させるリスクがあります。一般的に投資家がナンピンをしたくなる局面は、トレンドについていくためにするというより、トレンドに逆らってムキになって実行してしまうケースが多くなりやすいので、あまりオススメのできない投資法です。

ケース(3)積立投資

積立投資は、ドルコスト平均法(定期定額投資法)により、株式の株価や、投資信託の基準価額などの値段の上下を気にせずに、コツコツ株数や口数を貯めていく投資法です。ショック時は、株数や口数を多く買えるチャンスですので、目先の価格変動をあまり気にする必要はありません。

また、一時的に積立額を増やす方法や、値上がりしたもの・保有比率が上昇したものを売却し、値下がりしたもの・保有比率が下落したものを買増し(リバランス)するチャンスでもあります。積立額を増やす場合は、何ヵ月分の積立資金を前倒しで投入するか、どれくらい売られすぎているのかなどを基準に判断していくとよいでしょう。

リバランスは「リスクの再調整」とも呼ばれ、積立投資においては欠かせないメンテナンス方法のひとつになります。投資にまわす余裕資金のうち、銀行預金や国債などの安全資産とのバランスを考えながら実行していきましょう。大きなチャンスと考え、一気にリバランスしたくなるかもしれませんが、前のめりになりすぎないように徐々に実行していくのも一手です。

資産形成に活かせること

どのような投資法を取り入れているかによって差はありますが、株価などが大きく上下した場合は、チャンスでもあると同時に、対応方法を間違えばピンチにもなり得ます。

相場が大きく変動する局面にでくわすと、ビッグチャンスがきたと思って、必要以上にリスクを取りたくなるのが人間の性かもしれません。しかし、そこはより慎重に、いったん冷静に判断できるように、レバレッジをかけすぎない、リスクをとりすぎない、自信がなければ様子を見る、というのも悪くはありません。

筆者も何度も失敗してきました。一時的に儲けそこなっても、それはただの機会損失ですみますが、投機的な売買をしてしまうと、大損失につながりやすくなります。「落ちるナイフはつかむな」という相場格言もあります。株価が底打ちしたのを確認する前の買いは、うまくいけば利益が大きくなるチャンスでもありますが、リスクの大きい取引です。

一気に儲けたいという意識が強すぎると、えてして空回りしてうまくいかないことも多いです。「休むも相場」で、今後大きなチャンスがやってきたとしても、いつも通り淡々と、取引や積立てをし続けることを心がけていきましょう。

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