『人口減少』 事態深刻、問われる「道筋」 <検証・佐世保市政 朝長市長4期16年⑤完>

佐世保市の推計人口と転出超過数の推移

 佐世保市を中心に近隣12市町でつくる「西九州させぼ広域都市圏」。昨年11月、市内で開いた会合には各市町長らが顔をそろえていた。最大の課題である人口減少がテーマとなり、大都市への流出を広域都市圏の中心部でせき止める「ダム機能」に話が及ぶと、市長の朝長則男(74)は申し訳なさそうに口を開いた。「佐世保市が一番足を引っ張っている」
 多くの地方自治体が頭を抱える人口減少。県内では長崎市で顕著だが、佐世保市でも事態は深刻だ。
 推計人口は2010年の約26万1千人から減少傾向が続き、21年には24万人を割り込んだ。市外への転出超過は全国市町村の上位を抜け出せず、20年にはワースト4位まで悪化。ここ数年は千人以上の流出が続く。
 朝長は市長就任当初から人口減少社会を見据え、自治体規模や行政サービスを維持するための対策を打ってきた。10年に江迎、鹿町両町と合併。16年の中核市移行で、県から多くの事務が移譲され、市民が身近な場所で手続きができるようにした。さらに近隣市町との連携強化を図るため、19年に広域都市圏を形成した。
 「地域の絆」を掲げ、市民協働の態勢構築も注力。全27地区での地区自治協議会設立を実現した。
 こうした基盤づくりと同時に、地域経済を回し続ける「成長戦略」にこだわった。観光や基地などの重要政策を集約し、3期目後半に打ち出した「リーディングプロジェクト」も経済対策の色合いが強かった。
 「市長は県都長崎市との違いも意識していた」。複数の関係者はこう証言する。被爆地として平和を訴える強い発信力を持つ長崎市。現在、西九州新幹線開業に伴う長崎駅周辺の再開発など、大規模なまちづくりが進む。
 新幹線を巡っては与党が佐世保市への経由を約束しながら、採算性が問題視され、市は断念を強いられた。朝長は市議や県議時代に県北の苦境を目の当たりにした。「県都は黙っていてもチャンスが転がってくる。佐世保はそうはいかない」。こうした趣旨の言葉を周辺にこぼしている。そこには「基地の街」の現実と向き合い、着実に政策を積み重ねなければ地域が衰退するという危機感もにじむ。
 2月24日、朝長は市議会本会議で最後の施政方針説明に臨んだ。自らの実績を挙げ、「新時代に対応したまちづくりへの道筋を付けた」と胸を張った。
 ただ、人口減少に歯止めをかけられず、足元で“ひずみ”も生じている。地域経済を支えてきた商店街は徐々に疲弊。19年の市営バス廃止後、公共交通の利便性は低下した。市民からは不満の声も漏れる。
 朝長は将来につながる佐世保市の礎を築いたのか。それは、これから問われ続ける。
    =文中敬称略=


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