「『学ぶこと=お金がないとできない』じゃない世の中に」月額980円 ひとり親世帯のための“塾のサブスク”【SDGs】

「金銭的な理由で、子どもを塾に通わせてあげられない」。教育格差をなくそうと、シングルマザー経験者で、ひとり親世帯のための会社を経営する女性が「塾のサブスク」を始めました。

<英会話教室講師>

「グッドモーニング エブリワン」

2月25日、静岡市駿河区で開かれた英会話教室。

<英会話教室講師>

「スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン…」

この教室は主に、ひとり親世帯の子どもに向けた「ままoneアカデミー」という教育サービス。立ち上げたのは、シングルマザーに仕事を提供する会社社長の石光(せき・ひかり)さんです。

<「ままoneアカデミー」を運営するヴァリオス 社長 石光さん>

「お金がなくて、習い事とか行かせたいのに行かせられないっていうのがいま、結構問題になっている」

石さんは以前、保険会社で営業の仕事をしていましたが、6年前に離婚し、シングルマザーになったことから、仕事と子育ての両立が難しくなり、退職。その後、自ら会社を立ち上げました。

<石光さん>

「自分が我慢する分にはいいんですよ。子どもを我慢させる時ほど…ちょっと親メンタルやられますよね」

「ままoneアカデミー」は、月額980円で英会話や理科・数学などの受験対策をはじめ、サッカーのコーチングなどをオンラインや対面で好きなだけ受講することができるサービスです。まずは多くの人に試してもらいたいと、講師も賛同し、2023年は無料でサービスを提供しています。英会話教室の講師を務めているのは、イラン出身で静岡県立大学の留学生です。

<英会話教室講師と児童>

「アフリカ、カナダ…らんちゃん、そっちのほう言ってみて」

「チャイナ、ドイツ…ジャーマニー!」

<英会話講師で静岡県立大学 留学生 ザナさん>

「周りの親戚たちの中にそういう人(シングルマザー)がいっぱいいて、子どもの時から大変な状況を乗り越えなければいけないというのを目の前で見て生きてきたので、友達から英会話教室をやると聞いてすぐに『OKです』って」

子どもだけではなく大人にも楽しんでもらえるよう、ヨガ教室なども展開。親子で一緒に受講する人も多いといいます。

全国のひとり親世帯数は134万4,000世帯で、平均年収は母子家庭で272万円です。「経済的余裕がなくても、習い事ができる環境を整えたい」と石さんは考えています。

<石さん>

「習い事も同じぐらい昔に比べたら高いんですよ。それにお金をかけられるかって、悩んだ時に何を削るって言ったら、お母さんたちは自分のものを削るしかないんですよ。例えば、化粧品を安いものにしたりとか、美容院も、中には究極行かないっていうママもいるんですよね。そういったお母さんたちに、あんまり無理をさせずに」

石さんの会社は、スタッフのほとんどがシングルマザーです。

<本部スタッフ 堀内綾さん>

「子どもに何かあった時に、すぐに動ける、『いいよ』って言ってくれる環境で働けるのはとてもありがたいです」

「ままoneアカデミー」の運営に携わる神田恵さんは、障害のある3歳の息子との時間を大切にしたいと考え、塾講師を辞め、石さんの会社に転職しました。

<本部スタッフ 神田恵さん>

「こういう形で教育業界に携われるっていうのは、すごい縁を感じていて、あきらめていた部分もあった。昼間でこういう運営の部分で塾業界に携われてるっていうのは、すごくうれしい部分ではあります」

石さんは現在再婚し、3人の娘の母親となりました。

<石さんの長女 凛さん>

「自分で会社を立てて、そこまでできるのがすごいなって思います」

<石さんの次女 藍さん>

「かっこいいなって思います。学校の子にも『お母さんすごいね』とか言われるから自慢のママ」

<石さん>

「私は『学ぶこと=お金がないとできない』じゃない世の中にしていきたいので、ままoneアカデミーで勉強してよかった、それによって、人生がこうなったっていうのが10年後、20年後にどんどん出てきて、日本の未来の人材たちを作り出していけるようなお手伝いができたら、すごくうれしいなって思っています」

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