『おかえり嘉代子桜』 生誕の地 長崎・桜馬場に 自治会長ら植樹式

植樹をする(左から)森田さん、松本さん、本田さん=長崎市桜馬場2丁目

 長崎原爆で命を落とした林嘉代子さん=当時(15)=をしのぶ「嘉代子桜」の苗木の植樹式が4日、長崎市桜馬場2丁目であった。桜馬場は嘉代子さんが生まれた地とされ、地元自治会は苗木を「おかえり嘉代子桜」と名付け、平和を願って育てるという。
 嘉代子さんは原爆投下の1945年8月9日、爆心地から約500メートルの旧城山国民学校(現城山小)に「学徒報国隊員」として動員されていた。嘉代子桜は、母津恵さんが亡くなった娘や女学生をしのび、49年に同校に寄贈したソメイヨシノのこと。当時約50本が植樹され、現在は6本が残っている。
 数年前、地元自治会の役員が嘉代子さんが桜馬場で生まれたと聞き、苗木の植樹が決まった。このほど接ぎ木をして苗木を育てている「城山小原爆殉難者慰霊会」から1本譲り受け、嘉代子さんが住んでいた場所(現在は駐車場)の前にある観音堂の裏庭に植えた。
 植樹式には地元自治会会長の森田清美さん(77)、同慰霊会会長の本田魂さん(79)、子ども代表として伊良林小6年の松本悠希さん(12)らが参加。胎内被爆者でもある森田さんは被爆した家族のことも思い返し、涙ながらに「嘉代子さんが生まれた場所を見渡せるこの地に植樹をして、美しい花を咲かせる平和のシンボルとして多くの人に知ってもらい、平和の心が世界に広がってほしい」と願った。

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