保守票争う最激戦区 長崎市区(定数14)<県議選2023 直前情勢①>

 令和最初となる統一地方選の第1ラウンド、県議選(31日告示、4月9日投開票)まで1カ月を切った。全16選挙区(定数46)の直前情勢をリポートする。
 長崎市区は定数14に対し、22人が立候補を予定。県内最激戦区の様相を呈している。
 自民は現職6人に公認と推薦の新人各1人を加え、現行定数となった2003年以降最多の8人が出馬する。他の新人も入り混じり、かつてない保守票争奪戦となるのは必至。「自民で食い合い、共倒れする可能性がある」との悲鳴が漏れる。
 5選を狙う浅田眞澄美は「4年前よりかなりきつい。時間が足りない」と焦りを隠さない。「自民はぎりぎり6人通るかどうか」と分析するのは、4期目を目指す前田哲也。「足元を固めて、何としても前回並みの票数を死守せねば」と地域を回る。
 昨年の参院選長崎選挙区に出馬した他党の女性2人が参戦するとあって、4期目に向け江真奈美は気をもむ。「女性候補という優位性はなくなった。無党派層を頼りに戦ってきたが、浮動票を巡って争う新人も出てきて…。ダブルで厳しい状況」
 江が無党派層に強いとみる新人は、元民放アナウンサーで無所属の大倉聡。その高い知名度を警戒するライバルは少なくない。ただ本人は「知名度だけでは勝てない」と毎朝、蛍茶屋電停近くの国道沿いに立ち、支援を訴える。
 今回は「新人が粒ぞろい」(複数の現職)なのが、混沌(こんとん)とした状況を生み出しているようだ。
 医師の虎島泰洋は、県医師連盟から他候補に先駆けて推薦を得た。ただ「各県議とのこれまでの付き合いもある。一本化は難しい」と同連盟幹部。無所属、自民の推薦で戦う。
 中村俊介は市議からの転身を図る。市議選では上位当選したが「基礎票はそこまでない」。かつて所属した長崎青年会議所やカトリック関係の人脈を生かして支持を広げている。
 再選を期す下条博文は中村俊と同い年。浦上地区など地盤が重なり、共通の知人も多いといい、「影響を受ける」。市北部に加え、東長崎地区などでも浸透を図っている。
 同地区には、下条と同期の浦川基継も食い込もうとしている。新型コロナウイルス禍で「まともに(支持層拡大に向け)動けたのは最初の1年だけ」と吐露。僅差で勝敗が決した昨年の知事選を引き合いに「1票の重みが増している」と汗をかく。
 「現職はみんな危機感を抱いている」。再選を狙う久保田将誠は市内全域にポスターを張り、顔を売る。日の出、日の入りの時刻につじ立ちも始めた。
 これまで本県に足場がなかった政党の動きも混沌に拍車を掛ける。
 県総支部を置いて1年足らずの維新は、新人2人を立てる予定で党勢拡大に躍起。参院選に出馬した山田真美は市内全域で街頭活動を重ね、産婦人科医の野口将司は業界や子育て世代を中心に支持を広げようとしている。参政党からは元市消防局員の黒石隆太が挑む。陣営は「投票率が上がらなければ固定票を持っている現職が強い」と盛り上がりに期待する。
 連合長崎が推薦するのは現職3人と新人1人。現有4議席を確保するため、割り当てられた労組の票固めと上積みを地道に続ける。
 国民民主の中村泰輔は前回、同じ三菱重工労組出身だった議長経験者の議席をトップ当選で受け継いだ。支持組織が縮小する中、1月中旬から企業回りなどを「前回の2倍」に本格化させた。九州電力労組出身で同党県連幹事長の深堀浩は4選を期す。支持層に切り込んでくる新人が多いとみて気を引き締める。
 社民は11年に旧社会党時代から56年間守った議席を一度失い、前々回に坂本浩が奪還した。「みんなの力で取り戻した議席。絶対に負けられない」と3選に向け力が入る。
 立憲民主は長崎市長選に出馬する現職の離党(除籍)を受け、参院選に出馬した白川鮎美を急きょ昨年末に擁立。ポスターの掲示もまだ少ないが、白川は「人に会うのを優先」と駆け回る。
 一方、2議席維持を至上命令とする公明。4選を狙う川崎祥司は「候補者乱立でこれまでにない緊張感がある」といい、交流サイト(SNS)の発信にも力を入れる。元会社員の本多泰邦は、今期で引退する麻生隆のサポートを受けながら知名度アップに注力する。
 共産の堀江ひとみは、これまで安定して得票してきた。だがコロナ禍で活動が制限され、5選に向けた支持の広がり具合を読めずにいる。
 南部地域はベテラン勢が競合する。7選を目指す中山功は、行政とのパイプ役を24年間務めてきたと自負。世代交代の波を横目に「経験がある人も必要」とアピールする。前回の市長選で敗れた元職の高比良元は、三和地区を地盤に票の積み上げを図っている。
 理容店を営む有川好彦は地元の滑石・横尾地区を中心に支持を訴える。=文中敬称略=

◎立候補予定者

▼長崎市区
浅田眞澄美 56 自現(4)
江 真奈美 55 自現(3)
前田 哲也 59 自現(3)
浦川 基継 50 自現(1)
久保田将誠 51 自現(1)
下条 博文 47 自現(1)
中村 俊介 47 自新 
白川 鮎美 43 立新
野口 将司 32 維新
山田 真美 51 維新
川崎 祥司 60 公現(3)
本多 泰邦 51 公新
堀江ひとみ 63 共現(4)
深堀  浩 57 国現(3)
中村 泰輔 42 国現(1)
坂本  浩 64 社現(2)
黒石 隆太 31 参新
中山  功 74 無現(6)
高比良 元 70 無元(3)
有川 好彦 60 無新
大倉  聡 45 無新
虎島 泰洋 49 無新

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