「もう作りきれん」寒害で大打撃 長崎県露地ビワが存続の危機 後継者も不足、生産者ら不安

ビワの傷みを確認する森さん=長崎市、森果樹園

 長崎県特産の露地ビワは1月下旬の寒波で大きな打撃を受けた。7年前にも寒害に見舞われ、収量「日本一」を誇る産地は縮小傾向にある。存続できるか、生産者は危機感を募らせている。

 2月3日、小さな実(幼果)は凍り、茶色く変色していた。約千本を栽培している長崎市千々町の「森果樹園」の森純幸代表(49)は「ほとんどの実が駄目になった。7割以上は収穫が見込めない」と肩を落とした。
 県は調査の結果、県内の収量は平年比76%減、被害額は5億3千万円と見積もっている。
 2016年1月の寒害の際は平年比90%減、被害額8億4千万円に上った。同園は当時、露地ビワ用の簡易ハウスが7棟あり、被害を比較的抑えられた。森さんはこの経験を踏まえ、その後10棟を増設し、暖房器具で室温を保ってきた。
 だが今回は強風にもあおられ、17棟のほとんどが部分損壊。支柱の金属製パイプが曲がり、天井のビニールも吹き飛ばされ、保温できなくなった。「対策はしたけれど(結果的には)駄目だった」と嘆き、より頑丈なハウスの導入も検討するが、費用面で二の足を踏む。「(導入に向け)行政のサポートもほしい」
 本県は国内の収量の約3割を占める。県内で果実を収穫できる木の植栽面積は1992年に696ヘクタールまで拡大したが、気象災害や後継者不足などにより、昨年は290ヘクタールまで減少した。
 「もう作りきれん」-。被害を受けた高齢の生産者仲間から、森さんはそんな悲鳴を聞かされた。「寒害に遭うたびに生産者が離れていく」と不安を隠せない様子だった。


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