“袴田事件”再審開始を決定ー東京高裁「5点の衣類は第三者が入れた可能性否定できない」捜査機関の“捏造”に言及

1966年、静岡県旧清水市(現静岡市清水区)でみそ製造会社の専務一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で、東京高裁は3月13日午後、弁護団の再審請求を認め、袴田巖さん(87)の再審=裁判のやり直しを決定しました。

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東京高裁が再審開始を決定した袴田巖さん

この事件は、1966年、旧清水市でみそ製造会社の一家4人が殺害され、従業員だった元プロボクサーの袴田巖さんが逮捕され、1980年に死刑が確定しました。有罪とする重要証拠になったのが、犯行着衣とされる「5点の衣類」。袴田さんと被害者のものとされた血痕が付着していて、袴田さんを有罪とする重要な証拠となりました。

しかし、この衣類は事件発生から1年2か月後、裁判が始まった後に見つかるなど不可解なことが多く、袴田さんの弁護団は「5点の衣類」についた「血痕のDNA型鑑定」と1年2か月みそに漬かっていた血痕が赤すぎると指摘し、袴田さんの姉ひで子さんらがこれまで2度再審を請求。静岡地裁は2014年、この2点を合理的な疑いを抱かせる重要な証拠と評価し、再審=裁判のやり直しを決定。袴田さんは釈放されました。

検察側が即時抗告を行うと、東京高裁は2018年、地裁の決定をくつがえし、再審の請求を棄却。DNA型鑑定とみそ漬け実験の証拠価値を否定します。弁護側が特別抗告を行うと、最高裁は2020年「みそ漬け実験について審理が尽くされていない」と高裁に差し戻します。

最大の争点となったのが「5点の衣類」に付いた血痕の色。血のついた服を1年以上みそにつけても血痕に赤みが残るのか、それとも、黒くなるのか。検察側は「赤いまま」、弁護側は「黒くなる」と両者の主張は真っ向から対立してきましたが、東京高裁は2023年3月13日、みそ漬け実験報告書などについて、「無罪を言い渡すべき明らか証拠」であると認めた静岡地裁の判断に誤りはなく、再審を開始する静岡地裁の決定も、その結論において是認できるとました。

さらに、みそ漬け実験は、1年以上みそ漬けされた5点の衣類の血痕には赤みが残らないことを認定できる新証拠といえるとし、5点の衣類を袴田さん以外の第三者がタンク内に隠して、みそ漬けしにした可能性が否定できず、この第三者には捜査機関も含まれ、事実上捜査機関のものによる可能性が極めて高いと思われると指摘。検察側の即時抗告を棄却し、再審開始を決定しました。

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