神奈川・大磯二宮漁協、独自定置網漁に挑戦へ 今秋にも初漁、イシダイやブリ狙う 雇用拡大や6次産業化目指す

大磯漁港

 大磯二宮漁業協同組合が今秋にも独自の定置網漁に挑戦する。同漁協によると組合事業としては初めてで、相模湾ではやっていないという「五島式」の網で単価の高い魚を狙う。2017年の合併後も組合員の減少傾向が続く中、新規事業で雇用拡大を図る狙いもあるが、新たな挑戦には夢が原動力だ。「最終的に6次産業化ができれば」と港の活性化へ意欲を見せる。

 大磯、二宮の海では民間企業が定置網漁を行っているが、同漁協では行っていない。43人いる組合員の3分の2が、現在は刺し網漁やシラス漁、はえ縄漁、素潜り漁を行っている。残りの3分の1は遊漁船を扱っているという。両方を営む組合員もいる。

 同漁協は大磯、二宮の漁協が合併して誕生。当時は50人ほどの組合員がいたが、主に高齢化による引退で年々減っているという。企業の定置網漁に携わって漁業の面白さを知ったのがきっかけとなって就業する若者もいるため、同漁協でも新規に定置網漁をやってみることにした。小島拓代表理事組合長(41)は「今回の定置網で3人雇用する予定。漁業者を増やしたい」と意気込む。

 網は、前職が製網会社だった事務局職員がその会社と相談の結果、費用が安い五島式の底建て網を採用。構造は複雑だが、網全体で縦130メートル、横130~150メートルにわたる。

 網は手縫いで、1億円かかるものもある中、3千万~4千万円と比較的安く購入できるのも採用の決め手だったという。大磯町も支援として約1200万円の補助を新年度予算案に計上した。

 網は大磯、二宮町境付近、大磯ロングビーチ西方の沖合約2キロに設置する。かなり昔には定置網が置かれていたといわれ、もともと好漁場のポイントという。

 付近の水深は30メートルほどで、最深部の約10メートルの層にいるイシダイやブリなどを狙う。もっと上層を回遊し、定置網漁の主力魚種であるアジやサバより数は少ないが単価は高く、必要以上に魚を取り過ぎないことも考えた。小島組合長は「年間で2千万~3千万円の水揚げは欲しい」と期待する。

 これから網を発注して、初漁は早ければ11月ごろという。将来的に目指すのは定置網で取った魚を加工して販路に乗せる6次産業化だ。さらに定置網体験ツアーなどの観光振興も視野に入れる。小島組合長は「行政とも連携して大磯港を盛り上げていきたい」と夢を語った。

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