新たな参戦マニュファクチャラーを多数迎えた2023年WEC世界耐久選手権のシーズンが、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイでスタートした。
走行初日に設けられたふたつのプラクティスではトヨタGAZOO Racingの2台のGR010ハイブリッドが速さを見せたが、フェラーリ、キャデラックらも上位を狙える位置につけており、2日目のプラクティスと予選でどんな勢力図が見られるか、注目が集まる。
初日の走行を終えたセブリングのパドックから、各種トピックスをお届けする。
■“スペアはドイツ”で万事休す
フリープラクティス2で2号車キャデラックVシリーズ.Rと接触したため、プロトン・コンペティションは88号車ポルシェ911 RSR-19をセブリング1000マイルに出走させないことを決定した。
この事故は、ブロンズドライバーのライアン・ハードウィックが、チップ・ガナッシ・レーシングのドライバー、リチャード・ウェストブルックとの接触後、ターン7へのアプローチ左側のバリアに衝突したもの。
プロトンのチーム代表であるクリスチャン・リードは、88号車ポルシェはシャシーにダメージを受けたため、17日金曜日の開幕戦決勝レースに参加することができない、と明らかにした。
また、プロトンのスペアのGTE仕様のポルシェはドイツのチーム本拠にあり、レースのためにアメリカに輸送することはないことも、リードは合わせて認めている。
■タイヤウォーマー禁止とGTEプロ廃止の影響
WECがタイヤウォーマーを禁止したことによる影響は、サーキットによって「大きく異なる」と、グッドイヤーの耐久レースプログラムマネージャーであるマイク・マクレガーは述べている。
「セブリングやバーレーンのような温暖な気候では、(LMP2)タイヤは2周以内に最適な作動域に達するはずだ。だが、寒いレースでは、もっと大きな違いが出てくる。ドライバーは、タイヤ内圧を安定させるため最初の数周でオーバードライブさせ、バランスを取る必要がある」
小林可夢偉によると、トヨタGR010ハイブリッドは、ミシュランでのスティント開始時に、タイヤ温度について「安全性を確保するために」1周が必要だという。
「最大限のパフォーマンスを発揮するためには、おそらくもっと必要でしょう」と可夢偉は述べている。「タイヤの温め方にもよりますけどね」。
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ユナイテッド・オートスポーツのオリバー・ジャービスは、LMGTEプロクラスの廃止がLMP2ドライバーのトラフィック・マネジメントに与える影響はごくわずかだと考えている。
「(昨年まで)レースで彼らを捉えると、4台か6台が接着しているようだった。僕はまだ昨年との違いに気づいていない。レースではもう少し気づくかもしれないね」
■今週の競技長は昨年DTMのレースディレクター
ABB FIAフォーミュラE世界選手権およびエクストリームEレースディレクターのスコット・エルキンスが、今週末のレースでは競技長を務めている。このアメリカ人は昨シーズンのDTMドイツ・ツーリングカー選手権のレースディレクターでもあり、以前はIMSAに務めていた。
なお、WECのレースディレクターはこれまで同様、エドゥアルド・フレイタスが引き続き務める。
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FIA、ACO、IMSAは、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦する車両やカスタマーチームが運営する車両を考慮し、今年のハイパーカークラスのテスト規則を決定するために「多くの時間を費やした」と、ACO競技ディレクターのティエリー・ブーベは述べている。
WECの競技規則には、メーカーテスト、メーカーグループテスト、チームテストなど、さまざまなジャンルのテストが規定されているが、これらの定義が微妙に異なっている。
ブーベのFIA技術担当者であるマレク・ナワレッキはこう語る。
「それは単純に、何台のクルマを持っているか、どれだけのチャンピオンシップを戦っているかによる。具体的なケースを挙げれば、何日間あるかは分かる。また、いつホモロゲーションしたかにもよる」
今年、車両をホモロゲーションしたが、昨年はレースに出なかったメーカーは、最も多くの日数のテストが可能となっている。テストルール改正におけるもうひとつの重要な点は、メーカーがレース初年度に無制限にテストを行うことができなくなったことだ。トヨタとプジョーはデビュー年にこれができたが、例えば今季デビューするフェラーリにはこれが当てはまらない。
■木村武史のチームメイト、年間レース激増に「うれしい」
スコット・ハファカーは、今シーズン、ケッセル・レーシングとカーガイからフルタイムのGTレースデビューを果たす。
昨年のバーレーンでのルーキーテストでアストンマーティン・バンテージAMRをテストドライブしたこのアメリカ人は、57号車フェラーリ488 GTE Evoをドライブする契約を結び、WECには木村武史、ダニエル・セラとともに出場する。
IMSA LMP2でハファカーのチームメイトだったミケル・イェンセンは、以前ケッセルで活躍しており、ハファカーとチームを引き合わせるためのコネクションとなっている。
ハファカーは今年、WEC、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ、IMSAミシュラン・エンデュランス・カップにまたがる17戦のプログラムに参加することが決まっている。
「(近年は)レース出場は年5、6回というのに慣れていたので、とてもうれしい」とハファカーは語っている。
■アルピーヌLMDhは7月のロールアウトを目指す
アルピーヌとシグナテックは、オレカと共同開発している新型LMDhマシンを7月にロールアウトすることを目標としている。チーム代表のフィリップ・シノーはSportscar365に「7月か8月のはじめに最初の走行を行えば、OKだろう」と語った。
「我々は、すべてのテストプログラムとマシンの計画を立てることができるように、夏の大仕事を予定している」
なお、今季LMP2に参戦するアルピーヌ・エルフ・チームは、2022年最終戦バーレーン8時間レースからの輸送の遅れのため、ポルティマオで2日間のプレシーズンテストしか行っていない。
機材、およびアルピーヌのプログラムと同じくシグナテックが運営していた元リシャール・ミル・レーシングチームのオレカ07シャシーの到着が遅れたために、チームがテストをキャンセルしたことをシノーは明らかにしている。