フェラーリ499Pが衝撃のポールポジション獲得! トヨタ2台を逆転【WEC第1戦セブリング予選レポート】

 3月16日(木)、2023年のWEC世界耐久選手権第1戦セブリング1000マイルレースの予選がアメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで行われ、フェラーリAFコルセの50号車フェラーリ499P(アントニオ・フォコ/ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセン)がトップタイムをマーク。プラクティスまで速さを見せていたトヨタGAZOO RacingのGR010ハイブリッド勢を逆転する形で、フェラーリ499Pの記念すべき“デビュー・ポール”を獲得した。

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の12時間レースと併催されることで、木曜に予選、金曜に決勝が行われる変則スケジュールとなるWECのセブリング戦。今季のWECでは予選方式が変更され、LMGTEアマ、LMP2、ハイパーカーの順で、それぞれ独立した15分のセッションが行われることとなった。

 また、今年からタイヤウォーマーの使用が禁止されたことで、コールドタイヤでコースイン、タイヤ温度と内圧を上げてから、アタックに入るという手順がドライバーには求められる。

■LMGTEアマ:ボビーとキーティングの激しいタイム更新合戦

 この日昼のFP3に続き、最終コーナー方向に陽が傾く現地時間18時32分、予定より2分遅れでLMGTEアマのセッションがスタート。気温24度/路面温度33度というドライコンディションだ。

 ブロンズドライバーが予選を担当するLMGTEアマでは、ケッセル・レーシング57号車フェラーリ488 GTE Evoで木村武史が、Dステーション・レーシング777号車アストンマーティン・バンテージAMRでは星野敏がアタックへと向かった。

 最初のアタックで33号車シボレー・コルベットC8.Rのベン・キーティングがトップに立ち、57号車フェラーリの木村が2番手で続くが、83号車フェラーリのルイス・ペレス・コンパンクがタイムを更新し首位に。さらにこれをアイアン・デイムス85号車フェラーリのサラ・ボビーが上回る。

 ここからはキーティングとボビーの最速タイム更新合戦となった。キーティングが2回目のアタックで1分59秒396と先行すると、ボビーが1分59秒354とわずかに上回って再びトップに。さらにキーティングがこれを1分59秒345と塗り替える。

 残り2分を切り、ボビーは最終コーナーをウォールギリギリに立ち上がると、1分58秒949とさらにタイムを縮め、クラスポールを決めた。

 3番手はORT・バイ・TFの25号車アストンマーティンのアルマド・アル・アルハーティ。終盤にコースオフもあった木村はクラス7番手、Dステーションの星野はクラス9番手となった。

アイアン・デイムスの85号車ポルシェ911 RSR-19

■LMP2:ユナイテッドASのジャービスが最速

 18時56分にスタートしたLMP2のセッションでは。まずはJOTA28号車オレカ07・ギブソンのピエトロ・フィッティパルディが1分50秒067で首位に立つ。ここにハーツ・チーム・JOTA48号車のイーフェイ・イェが肉薄し、JOTA勢のワン・ツーに。

 ピットに戻りタイヤ交換を行って再びコースへと出ていく陣営も目立つなか、残り5分を前にユナイテッド・オートスポーツ23号車のオリバー・ジャービスが1分49秒974と49秒台へ入れ、暫定首位へ。

 最終アタックでも次々とタイムが更新され、上位ではチームWRT31号車ロビン・フラインスが2台のJOTAの間に割り込み3番手へ。さらにプレマ・レーシング9号車のアンドレア・カルダレッリも6番手へと順位を上げる。アルピーヌ・エルフ・チームの36号車マシュー・バキシビエールもタイムを更新し、フラインスに次ぐ4番手へとポジションを上げた。

 しかし最後まで23号車のタイムは破られず、ジャービスのクラスポールが確定。JOTA28号車が2番手、WRT31号車が3番手というトップ3となった。

LMP2予選で最速タイムを記録したユナイテッドAS23号車のオリバー・ジャービス

■ハイパーカー:フォコが週末最速タイムを記録

 日没間際の19時20分に開始されたハイパーカーのセッションでは、ピット位置が最も出口寄りの2号車キャデラックVシリーズ.Rを先頭に11台の車両がコースインしていく。

 トヨタGAZOO Racingでは、FP3でクラッシュのあった7号車GR010ハイブリッドも無事出走。7号車は小林可夢偉が、8号車はブレンドン・ハートレーがアタック担当となった。ハートレーはトラフィックを避けるためか、少し遅れてコースへと入っていった。

 序盤、ミケル・イェンセンがドライブする93号車プジョー9X8がコース上で一時ストップする場面もあったが、まもなく走行を再開し、事なきを得る。

 タイヤウォーマー禁止により、各車はタイヤへの熱入れをしながら徐々にタイムを上げてくるという、昨年までの予選とは異なる光景が見られるなか、まずはミカエル・クリステンセンの5号車ポルシェ963が1分47秒387を記録し、暫定首位に立つ。

 これを破ったのは51号車フェラーリ499Pのアレッサンドロ・ピエール・グイディで、1分46秒台へと突入。さらに8号車のハートレーが1分45秒364、さらに7号車可夢偉が1分45秒825と、トヨタ2台が相次いで45秒台に入れ、プラクティスから続く好調をキープしてワン・ツーで予選を終えるかと思われた。

 しかしこれを上回ったのが50号車フェラーリのアタッカーを務めたフォコだった。フォコは残り5分を前にしたアタックで1分45秒067というこの週末の最速タイムを絞り出し、タイミングモニターの最上段に躍り出た。さらに51号車もピエール・グイディが終盤にタイムを更新して45秒台に入れ、4番手につけることに。

 一方、トヨタ2台はそれぞれの自己ベストタイムをさらに更新するもののフォコには及ばず、残り4分を切って相次いでピットへと向かい、アタック終了。8号車が2番手、7号車が3番手で予選を終えることとなり、フェラーリのピットはデビュー戦でのポール獲得に沸いた。

 新規参戦メーカーを多数迎えた新時代の2023年WEC最初の予選は、スポーツプロトタイプレースに復帰したフェラーリが、その初戦で劇的なポールポジションを獲得するという結果に終わった。なお、5番手には2号車キャデラック、6〜7番手にはポルシェ963と、WECデビュー戦となった2車種のLMDh車両が続いた。さらに、昨年から参戦するプジョー9X8の2台、そしてノンハイブリッド勢のグリッケンハウス、ヴァンウォールと続く予選オーダーとなっている。

 注目の開幕戦決勝レースは3月17日(金)、現地時間正午(日本時間18日午前1時)にスタート。1000マイル、または8時間で争われる。

トヨタGAZOO Racingの8号車GR010ハイブリッド
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963
プジョー・トタルエナジーズの93号車プジョー9X8

 

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