桜の季節

 この1、2年、よく耳にするようになったのは「600度の法則」だ。厳しい冷え込みによる休眠打破が起きる2月の初めを起点にして、日々の最高気温の総和が「600」に届くと桜が開花時期を迎える-という説▲さんざん語り尽くされているはずなのに“新説”が登場すること自体、この花が愛されてやまない何よりの証しだろう。丁寧に足し算を積み重ねながら待っている人が県内にもいるはずだ。東京の開花宣言から昨日で5日。お待たせしてます…どこからか声がしそう▲ところで、先週の末辺りから、気象台の標本木よりも“一足お先”に花を咲かせている桜をあちこちで見かけるようになった。「もう咲いてもいいよね」-。何でもかんでも擬人化するのは考えものだが、せっかち桜の決断が目を楽しませる▲「もういいよね」は、今年の春のキーワードだ。卒業式では久しぶりの校歌。港にはクルーズ船が、甲子園のアルプス席には吹奏楽と全力の大声援が戻ってきた▲別れと出会いの季節。職場ではこの2年間、別な意味の「見送り」だった送別会や、4月の歓迎会に向けた相談が始まっている頃かもしれない。そうそう、公園などでのお花見宴会も今年はOKと聞いた▲新しい一歩をふわりと彩る桜がいつもの春よりもうれしく、待ち遠しい。(智)

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