木の芽ぼこり

 木の芽とは一般的にサンショウの若芽のことだが、「木(こ)の芽どき」といえば、春めいて木々が芽吹く頃、つまり今時分を指す。この頃に降り続く雨を「木(き)の芽流し」と呼ぶらしい。雨粒が芽をきれいに洗うような響きがある▲「木の芽ぼこり」とは、木の芽どきの気分の高ぶりをいう。「ほこり」は「誇り」で、草木が育つことを「ほこる」という地方もある▲早春という時節柄、観光県長崎の復活へ、と上向く気分を「木の芽ぼこり」と表してみる。長崎港と佐世保港に、国際クルーズ船が3年ぶりに入った。その巨大で優雅な姿に胸が弾んだ方も多いだろう▲コロナ前の2018年、本県の港に入ったクルーズ船の乗客乗員の数は過去最多の125万人で、実に本県の人口とほぼ同数の客が訪れている。それがいきなり、ごっそり消えた▲きのうの紙面に「クルーズ船は長崎の街並みの一つ」と懐かしみ、復活を祈る声がある。豪華な客船あってこその港町長崎、港町佐世保だろう。港町の名を取り戻す時もきっと遠くない▲船が入る日時や岸壁の名を前もってお知らせする「クルーズ船情報」というコーナーが本紙にある。15日の情報面にそれが久しぶりに載った。ほんの小さなコーナーだが、観光県の春を告げる“木の芽”になり、その数がぐんと増える日を待つ。(徹)

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