中野区議会議員の渡辺たけし(わたなべ・たけし)氏は、2015年に初当選以来、営業社員として顧客の声に寄り添った経験を活かし、現場の声を聞くことで区の課題解決に取り組んできました。私生活でも中野区のスポーツクラブを立ち上げるなど、地域に暮らす皆様の日常をより良くするために、日々精進されています。
今回は、430億円の補助金が投じられる中野サンプラザ・区役所の跡地再開発の見直しをメインに、渡辺氏が政治家になったきっかけや政策、これからについてお聞きしました。
「国民の命が脅かされても、国は何もしないのか?」
選挙ドットコム編集部(以下、編集部):
政治家を目指したきっかけを教えていただけますか?
渡辺たけし氏(以下、渡辺氏):
東京での営業社員時代、北朝鮮による日本人拉致問題に関心があり、西村眞悟氏(元衆議院議員の政治家で、拉致問題を国会で1番最初に取り上げるなど、拉致被害者救出に尽力)の政治団体へ入ったことがきっかけです。
その政治団体の中で、横田めぐみさんが拉致される1週間前に、石川県警が捕まえた北朝鮮のスパイを、外交上の問題を懸念して政府が表沙汰にしないまま釈放したといった話を聞き、とてもショックを受けました。
(出典:警察庁公式サイトより 北朝鮮による拉致容疑事案について – 宇出津事件)
そこで国が北朝鮮に対して毅然とした対応を取ることで、北朝鮮は日本へのスパイ活動などを制限出来ていた筈で、結果、横田めぐみさんは、北朝鮮に拉致されなかったと思います。北朝鮮が日本人拉致を認めた後の政府の対応も歯がゆく感じることが多く、
「国民の命が脅かされても、国は何もしないのか?」
と、憤りを持って政府の対応を見ていました。この思いは今も変わっていません。西村氏は拉致問題を放置している日本政府を痛烈に批判していたので、その考えに強く共感しました。
西村氏の選挙応援を通して、同じ想いを持った仲間と政治談議をする機会が多々あった中で「このまま議論をしていても、世の中は何も変えられない」と思うようになり、政治の世界にもっと深く関わりたいと考えるようになりました。
「日常生活と政治がかけ離れているので、政治に興味関心を持てない」といったことを、若い人たちからよく言われますが、私は、1人1人の日常生活の中に政治があると考えています。
例えば、国民から不満が上がっている消費税の増税は、政治の力で実現しました。
一方で、コロナ禍の中、国民1人に一律10万円を支給した特別定額給付金や、東京都の「18歳以下に月額5000円」の給付金支給も、政治の力で実現した話ですし、議員定数の削減、報酬のカット、消費税や所得税の一時的な減税なども、世論の強い後押しがあれば、政治の力で実現できると考えています。
日常生活の中に、政治は隣り合わせで存在し続けており、生活環境向上ために、政治の力は使われていかなくてはなりません。
「行政が動かないなら、私が!」生活保護ホットラインを個人で設置・待機児童問題を営業スキルで解決
編集部:
政治家になってから行ってきた政策について、具体的にお聞かせください。
1.生活保護ホットラインを個人で独自設置!
渡辺氏:
初めて行った政策は、生活保護制度の適正化を目的とした「生活保護ホットライン」の独自設置でした。当時、区民の方から生活保護制度に関する不満の声を多く頂いており、中野区でも行政の窓口へ「生活保護に関する相談窓口」を設置して、生活保護に関する様々な情報を、区民の方々から提供してもらおうと考えたのです。
既にこのような仕組みを作っていた自治体もあり、中野区でも導入したかったのですが、本会議の一般質問で何度も提案をしたにもかかわらず、残念ながら採用されなかったため「行政が動かないなら、私がやろう」と、私個人の携帯番号を窓口にして、独自の「生活保護ホットライン」を設置しました。
明日からの生活の目処が立たない人や、不正受給の通報などを受け付けており、これまでの8年間で100件ほど対応し、実際に不正受給の防止や生活保護の受給につながった実績もあります。
●TEL:090-8080-3773
●Email:nabetake0112@gmail.com
2.待機児童問題を「困りごとを聞く」営業スキルで解決!
渡辺氏:
2019年ごろ中野区は待機児童が非常に多く、相談も多数受けていました。待機児童解消のためには、区内で保育所の数を増やすことでしか解決策はありませんでした。
課題解決のために、事業者目線で「どうすれば民間業者が、中野区に保育園を作りたくなるか」を知るために数多くの事業者へ取材を行った結果「保育所建設費と維持管理費の金額が他自治体より良ければ前向きに検討出来る」といった声を多くの事業者から頂きました。
結果として、保育所整備費の大幅な予算の増額を提案、実現し、数多くの事業者が中野区に保育園を開設することとなり、今年度ようやく待機児童ゼロが達成されました。
また、保育園の増設後も、事業者の方の困りごとを聞き取り、「保育士の確保が大変だ」という課題を発見しました。当時は都内で保育園の開園ラッシュで、年間5000人の新規の保育士が必要と言われていました。
そこで、保育士確保のために保育士の家賃補助の増額を提案しました。その時、中野区は月額7万2000円まで補助を出せるところを、5万円程度に抑えて出していたので、東京都の保育士人材確保策に使われる補助金を、最大限活用して23区トップクラスの補助制度に増額するよう要請しました。
成果としては、保育士確保の補助対象や補助制度の拡大と、補助金の増額を実現しました。
編集部:
渡辺さんは地域政党「都民ファーストの会」に所属しながら活動されてきました。政党で連携して推進した政策も教えてください。
渡辺氏:
以前に、中野区選出の都民ファーストの会代表でもあった、荒木ちはる前都議会議員(現在は小池都知事の秘書)と一緒に、中野区内の子育てママさん達と、懇談会を行ったことがありました。その中で「赤ちゃんと一緒に電車に乗ると、周囲の視線が気になってしまう」「子どもと一緒に電車に乗るといつ騒ぎ出すか不安になってしまう」といった声を頂いたのですが、このような世間の視線や、電車の中の雰囲気といったものに対しての改善策というのは、個人の力だけで解決することは困難です。
この時は、荒木さんが東京都の職員に働きかけて、東京都が、都営大江戸線の優先席の壁をアニメ「きかんしゃトーマス」で装飾した「子育て応援スペース」を作り、子どもと気兼ねなく電車に乗ってお出かけが出来る車両を導入しました。
これは、区議だけの力で何とかなるものではなく、荒木さんの行動力、そして都民ファーストの会が、ある程度都庁へ影響を与える力があったから実現できたことだと思います。現在では小田急線でも「子育て応援車」を作っており、徐々に鉄道事業者の中でも広がりを見せています。
政治の世界では「数は力」という言葉をよく聞きますが、個人の力ではどうしようも出来ないことも、組織の力で実現することが出来るということを、都民ファーストの会の中で学びました。東京都が、介護従事者へ月額で最大7万円の家賃補助を与える全国初の事業も、都民ファーストの会からの要望で実現した事業です。区内でいち早く導入させることが出来たのも、このような情報を政党内で素早く共有して頂いたおかげです。
他自治体と比較して、早い段階で中野区で働いている介護従事者への支援となる制度を確立させたことは、素直に嬉しく思っています。
今後も東京都と中野区の連携、橋渡し役としての活動についても、力を入れて取り組んでまいります。
「要望に応えて信頼関係を構築」営業スキルを政治に活かす
編集部:
法人営業をされていた経験が、政治家としての強みになっていると感じる部分はありますか?
渡辺氏:
7年間の通信インフラの法人営業経験で学んだ「お客様の要望に応えて、信頼関係を構築していく」ソリューション営業(課題解決型営業)のスキルは、政治活動に活かせると考えています。信頼されて悩みを話してもらうために、レスポンスを速くしたり約束を守ったりと、当たり前のことかもしれませんが小さな積み重ねを大切にしていました。
結果として、半期ごとの営業ノルマを継続的に達成し続け、130人の営業部隊の中でも、常に上位5番目以内の成績をキープしていました。
政治家としても、路上のタイルのガタつきの報告にも素早く対応して結果を報告するなど、小さな積み重ねで区民の皆様と信頼関係を築くように心がけています。
430億円を投じる中野サンプラザ再開発を、区民により良いものへ!
編集部:
これから行っていきたい政策を教えていただけますか?
1.中野サンプラザ・区役所の跡地再開発の見直し
渡辺氏:
第一に、中野サンプラザ・区役所の跡地再開発の見直しを行っていきたいです。
中野サンプラザ・区役所の跡地再開発は、全国の市街地再開発の中でもトップレベルの430億円の補助金(税金)を投入する計画です。それにもかかわらず、現在の事業計画は、中野区民にとって恩恵がほとんどない内容になります。
一方で、今回の再開発見直しについては、「ここまで進んでいると見直しは難しいのでは」といった声もあり、議会の中でも少数派の意見となっております。
それでも私は、都市計画決定前の今の時期であれば、充分に見直しは可能であると考えています。
「中野駅前に行けば、色々と楽しめるよね」と、愛着を持っていただけるような場所にするためには、多くの区民の方々の後押しを必要としています。
編集部:
こちらの計画の具体的な問題点は何でしょうか?
渡辺氏:
一番の大きな問題点は、議会の議決をすることなく、区民の財産でもある区有地を、区が勝手に処分しようとしていることです。時価数百億円規模と言われている、駅前超一等地を売却する方針を示したのは、今から6年以上前の話になるのですが、その時から私は「土地を手放すのではなく、定期借地権方式(期間を決めて土地を貸し出す権利のこと)など、区有地を最大限利活用する手法についても検討するべきだ」という主張を繰り返し議会から提案し続けましたが、区は、議会からの声に耳を貸すことなく、当初の計画を推進し続けています。
区有財産を最大限利活用するための財産運用シミュレーションを行わず、議会の議決を取ることもなく、区民の財産である時価数百億円規模の区有地を、区が勝手に処分することは、決して許されることではありません。
私の周囲からも「駅前超一等地を手放すのはもったいない。事業計画を白紙撤回にしてでも土地を守るべきだ」といった声が聞こえてきます。こういった思いを持った区民の方々に対しても「なぜ土地を手放さなくてはいけなかったのか」といった理由を、区は、根拠のある数値を示して、説明する責任を果さなくてはいけないと考えています。
そもそも、複数の選択肢があるにもかかわらず、数百億円規模の区有地を、議会の承認を得ることなく売却処分すること自体、道義的に許されることではありません。
遅滞なく事業を進めていく姿勢も必要ですが、根拠のある数値を示して、議会の承認を求める姿勢についても、引き続き、区に対して求めてまいります。
編集部:
他に問題となっていることはありますか?
渡辺氏:
今の事業計画では、区民が利用できる公共のスペースが少なく、マンションやオフィスなどが、床面積の多くを占めており、補助金(税金)を受けて大きな利益を得る事業者に対して、区民の受ける恩恵が少ない点も大きな課題と考えています。
また、こちらについても、これほどの巨額な補助金(税金)を使うのにもかかわらず、議会や区民の声を全く取り入れておらず、事業者と中野区の間で、全てが決められている状況です。
私は、この事業計画が、区民に恩恵の少ない中身となった理由の一つに、7000人ホールを建設する計画が入っていることが、大きな原因になっていると考えています。
大規模なホールは、借り手がいなければすぐに赤字になってしまう、非常にリスクが高い商業施設です。このような施設を民設民営で運営することに対して、事業者はリスクを恐れるあまり、他の施設で大きな利益を出そうとして、公共スペースとのバランスが悪くなっているのではないでしょうか。
私は、ホールの規模についても、今の中野サンプラザと同様に2000人~3000人程度に縮小しても良いと考えています。
この問題に対する解決策として、私は公園や、キッズスペース、障害福祉施設など、区民に恩恵のある施設や空間を事業者に作ってもらう代わりに、ホールを縮小するなど、事業者側の負担軽減を図り、区民と事業者にとっての利益のバランスが良くなるように変えていきたいと考えています。
もし仮に、区民への恩恵が少ない事業計画であるならば、補助金(税金)を与えるべきではありません。
区民の皆さまの声をいただけると助かります。
(区役所・中野サンプラザ跡地についての緊急アンケートはこちら)
(中野サンプラザ再開発の事業内容についてのアンケートはこちら)
2.教員の質の向上・議員定数の削減など身を切る改革
編集部:
他に行いたい政策は、ありますか?
渡辺氏:
教育の質の向上に向けた取り組みや、議員定数の削減など身を切る改革を実現したいと、考えております。
私自身、教育学部で教育実習を経験した身として、子どもの成長に大きな影響を与えるのは教師であるといった思いが強くあります。教育環境の質の向上を目指すということは、教員の質をより向上させていくことであると考えています。
これまでもICT機器の導入促進を提案するなど、学校教育現場のIT化を進めてきましたが、教員のITスキルが追い付かないといった課題がありました。
ITスキル向上に繋がる研修制度や、教員を支えるサポート体制を充実させていきたいと考えています。
また、以前から提案し続けていたコミュニティスクールの導入が、今年度からようやく実現しました。
地域の大人たちが、学校運営に参加することが出来るコミュニティスクールの制度が機能することで、町会の役員やPTA、民生委員などが学校運営に参加し、学校と地域が、より密接な関係を構築することが出来るようになります。
また、教員の事務仕事や雑務などを、地域ボランティアの方々にある程度肩代わりしてもらうことも可能になります。
今後も引き続き、教員が授業の準備に集中できる学校環境の整備に、取り組んでまいります。
議員定数の削減や報酬カットは、引き続き進めていきたいです。23区と比べても中野区は定数が多い方なので、6人ほど減らしてもいいと考えています。
編集部:
地元では、どのような活動をしていますか?
渡辺氏:
東中野に住んでいるので、主な活動拠点は東中野周辺になります。町会に所属して地域活動を通して、地元の方々の陳情、要望を伺い、課題の解決に努めています。
例えば、東中野駅西口には、都内でも有名な桜並木が線路沿いにあるのですが、老木となったため、植え替えの要望が地元住民から挙がっています。ところが、JRの敷地内に植えられているため、JRの許可を頂かないと桜の苗木を植えることは出来ません。このようなことは、政治の力を使わないと解決できない課題です。
JRは民間事業者ですが、国交省の意向を聞く傾向があります。中野区とJR担当者の協議だけではなく、場合によっては国にも働きかけながら、地元の名所を残すために何ができるのか、試行錯誤を重ねながらJRに許可を頂ける提案内容を模索しているところです。
また、6年前から毎週水曜日に東中野駅の西口で、朝の駅頭を行っているのですが、その時に駅前ロータリーにある花壇の水やりと、周辺の清掃活動を行っております。
最近は中野駅北口でも朝の清掃活動を行っています。前日に駅周辺で酒盛りをした人たちの痕跡があちこちにあるので、掃除をした後に街宣をするのが習慣になったのですが、地元の方々からも「毎回お掃除ご苦労様」「お花がいつも綺麗に咲いてるね」などと声をかけて頂くようになりました。誰かに褒められたくて始めたわけではないのですが、見てくれてる人が居るとやっぱり嬉しいものです。「今後も出来る限り続けていこう」というモチベーションに繋がっています。
編集部:
プライベートではどのような趣味をお持ちですか?
渡辺氏:
趣味はバスケットで、中野区でスポーツクラブも立ち上げました。バスケットの個人開放にも参加して、全体の取り纏めも行っております。
参加者の方に楽しんでもらいたいので、色々な声を取り入れて5対5のゲームをする時は、均等な実力となるチーム分けにするなど工夫しています。
こういった活動を通して「中野区で暮らす方の日常生活をより良くしていきたい」と考えていますし、政治にも通じる考えだと思っています。
【渡辺たけし氏のプロフィールページはこちら】