ココイチの味は栃木県が出発点 大ファンの記者が秘密に迫った 【実はとちぎで作っています】④壱番屋栃木工場

ココイチの店舗

 1人暮らしの私にとって、国内最大のカレーチェーン店「カレーハウスCoCo壱番屋」(ココイチ)は、なくてはならない存在だ。週1回は通っている。「1辛、2辛」でおなじみの辛さ調節や種類豊富なトッピングが特徴で、カレーソースとの組み合わせは約12億通り。そんなココイチの工場が栃木県内にある。勝手にファンを代表して、おいしさの秘密に迫った。

 ココイチ1号店は1978年、名古屋市郊外にオープンした。海外10カ国以上にも拡大し、2月末時点の店舗数は1455店に上る。栃木県内には15店舗がある。

 工場は全国に3カ所。元々は愛知工場のみだったが、97年に佐賀工場、99年に栃木工場(矢板市こぶし台)をつくった。栃木に工場を建てた理由について、ココイチを展開する壱番屋は「東日本エリアの店舗に製品供給がしやすく、高速道路から近いため」と説明した。

 4階建てのこの工場では、カレーソースを主に製造している。月間600~700万食(約千店舗分)を量産し、8割の国内店舗に出荷する。

 圧巻だったのは、2トン釜と1トン釜計23機が並ぶ「釜場」。カレーの良い匂いが充満し、服に染み付いてしまうくらい。釜の中をのぞくと、見たこともないほど大量のカレーがかき混ぜられていた。

 スピードなどは機械が制御しており、従業員がタイミングを見計らって肉や野菜などの具材とスパイスを投入する。スパイスはもちろん企業秘密。大釜で4時間煮込むことでうま味がカレーソースに溶け込んでいき、深いコクが生まれる。

 2トン釜で一度に作ることができるカレーソースは、約1万7千人前。出来上がったソースが配管を通って流れていく様子を見て、喉がゴクリとなった。

 カレーソースは袋詰めされた後、巨大冷凍庫へと運ばれる。災害などで工場が稼働できない場合でも、1カ月間は全店舗の営業ができるだけのソースが蓄えられている。

 出荷までは、マイナス25度の冷凍庫で5日ほど寝かせる。角が取れまろやかな味わいになるといい、谷井雄一(たにいゆういち)工場長(54)は「一般的に『2日目のカレーはおいしい』と言うが、この寝かせる作業がおいしさのひけつ」と明かした。

 最終検査を行うのが検査室。解凍後、お店で出している状態にして食味をする。担当者の女性従業員は「多いときは1日30回くらい食味をする。そして家に帰ったら、夕食がカレーだった」と苦笑いしていた。ちなみに工場の社食は、月、木の週2回がカレーだという。

 懐かしさを感じつつ、家では再現できない深い味わいが魅力の「ココイチの味」。その出発点が本県であることを誇らしく思った。

壱番屋の栃木工場
計23機の大釜が設置された「釜場」
かき混ぜられる大量のカレー
ソースは配管を通って4階から1階まで運ばれる
巨大冷凍庫
谷井栃木工場長

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