遠藤周作の文学を次世代に 生誕100年記念し生涯たどる 長崎市の文学館

遠藤と妻順子さんの遺影を飾って執り行われたミサ=長崎市、出津教会

 長崎市東出津町の市遠藤周作文学館で27日午前、遠藤の生誕100年記念式典が開かれ、田上富久市長や遠藤の長男龍之介さん(66)らが特別企画展のテープカットを行った。午後には、ファンや親交があった人らでつくる「周作クラブ長崎」(高尾直子代表世話人)が同市西出津町の出津教会で記念ミサを執り行い、遠藤と妻順子さん(2021年、93歳で死去)に感謝の祈りをささげた。
 遠藤は1923年3月27日、東京生まれ。55年「白い人」で第33回芥川賞受賞。カトリック信者で「沈黙」「深い河」など宗教をテーマにした多くの名作を発表。96年、73歳で死去。「沈黙」の舞台となった旧西彼外海町に2000年、文学館が開館した。
 特別企画展は市の記念事業の一環。式典には遺族や、夫妻と親交のあった人、研究者らが参列。龍之介さんは「父はことあるごとに長崎を『第二の故郷(ふるさと)』と言っていた。(同展を)多くの人に見てもらい、父のことを思い出してもらえれば」とあいさつ。田上市長は「遠藤文学にこれから親しむ若い皆さんに、ぜひ来てほしい」と期待を述べた。
 同展は「沈黙」など代表的な5作品を柱に生涯と文学を解説。ユーモアあふれるエッセーなど多彩な作品群や没後の動きにも触れ、人間的魅力を発信している。この日は初公開となる初期の代表作「海と毒薬」の生原稿などに、参列者らが熱心に見入っていた。開催は来年9月26日まで。
 一方、出津教会であった「遠藤周作とすべてのキリシタンのためのミサ」には、式典の参加者や信者ら約80人が参列。花に囲まれた遠藤と順子さんの遺影が飾られた中で、「誰もが持つ人間の悲しみ、苦しみに心を寄せた遠藤文学が、どうか次世代に引き継がれていきますように」などと祈りをささげた。

展示を見ながら語り合う遠藤龍之介さん(右)と田上市長=長崎市遠藤周作文学館

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