福井刑務所24時、高い塀の向こう側の生活とは 施設入り口に掲げられた「容姿端正」

新型コロナ対策で廊下の窓は開けっ放し、さらに大型扇風機を回して空気を循環させている。2月中旬、外は吹雪。心底冷え込むが、刑務官は動じることなく一部屋一部屋巡回していく

 「カチッ」。午後9時、スイッチを落とす音と共に、冷たいコンクリート床の廊下は暗闇に包まれた。整然と並ぶ鉄の扉。鉄格子がはめられた窓から薄暗い蛍光灯の光が漏れる。福井県福井市の足羽川沿いにある福井刑務所。巡回する刑務官は、窓の一つ一つに鋭い眼光を向ける。刑務所の三大事故とされる逃走、火災、自殺を防ぐことが絶対的な責務だからだ。365日24時間、監視の目が緩むことはない。

 「容姿端正」。庁舎から収容施設に続く出入り口にある、大きな姿見の上に掲げられた文字。収容者の身なりや行動を厳しく指導する以上、自分たちが手本になる必要がある。刑務官は身なりを確認した後、厳重なシステムで何重にもロックされた重厚な鉄扉を開ける。

 収容者は12畳ほどを複数人で使う定員7人の「共同室」か、4畳ほどの「単独室」で刑務作業以外の多くの時間を過ごす。いずれも畳敷きで、通路とは鉄のドアと鉄格子がはめられた窓で仕切られている。一部鉄格子がない部分は「食器口」と呼ばれ、居室で食べる朝夕の食事や新聞、手紙などをここから受け渡す。

 夕食後の娯楽時間、居室備え付けのテレビや私物のマンガを楽しむ収容者。身支度や食事の時間も含め、刑務官による居室前の巡回は常に行われる。気を緩めることなく足早に、でも確実に部屋の中を注視する。

 監視には、通路などあらゆる場所に設けられたカメラも活用。屋外を含め、不審者の侵入や収容者の不審行動に目を光らせる。冷え込む夜間も、懐中電灯を手に暗闇を進んでいく。

 取材した2月中旬、収容者複数人の新型コロナウイルス感染が確認され、複数の刑務官が協力して感染者の隔離や居室の消毒にあたった。三大事故に加え、感染拡大の阻止も刑務官の重要な業務だ。

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 高い塀の向こうの様子は、こちらからうかがい知ることはできない。どんな指導が行われ、収容者はどんな暮らしをしているのか―。罪を犯した人々の更生のため、約120人の刑務官が職務に励む福井刑務所。約300人を収容する同刑務所で、若手刑務官の仕事に密着した。

◇福井刑務所 受刑者は26歳以上の男性で、主に東海、北陸6県から、初めて服役し刑期10年未満の「A指標受刑者」を収容している。2月14日現在の収容者は278人(未決収容者を含む)。更生や円滑な社会復帰に向け、アルコールやギャンブル依存からの離脱指導、職業訓練なども行っている。敷地の広さは、東京ドームより少し狭い約4万3千平方メートル。受刑者の活動時間は決まっていて、午前6時半に起床、同7時から朝食。同8時前から午後4時半まで刑務作業に励み、同5時から夕食。同9時には就寝する。

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