「殺処分の猫減らしたい」 不妊手術専用車、導入目指し資金募る 長崎・川棚の法人

移動手術車両を見学する大津さん(手前)=長野市(大津さん提供)

 「過酷な環境で生まれ、殺処分などで死にゆく野良猫を減らしたい」。一般社団法人「ネコノタメナラ」(東彼川棚町)は、不妊化手術ができる長崎県内初の専用車両の導入に向け、クラウドファンディング(CF)で資金を募っている。代表理事の大津かおりさん(50)は「猫のことが放っておけないとの思いで活動する人たちの負担軽減につながれば」と期待を寄せる。
 野良猫を捕獲(Trap)し避妊・去勢(Neuter)をして、元の場所に戻し(Return)、外猫の数を減らす活動「TNR」。同町中組郷で保護猫カフェを営む大津さんは、娘のことねさん(25)と共に2018年にTNR活動を始めた。活動は交流サイト(SNS)や来店した客の共感を呼び、猫に関する困り事の相談も寄せられるようになった。一昨年、有志と「ネコノタメナラ」を設立。昨年、法人化し約90人の会員がいる。
 本県の犬猫の殺処分数は21年度、1345頭で2年連続の全国ワースト1位。このうち猫は1004頭で全体の7割を占めた。県生活衛生課の担当者は「飼い主不詳の子猫の引き取りが多い」と説明する。
 背景には猫が暮らしやすい気候と、旺盛な繁殖力がある。環境省によると、雌猫は生後4~12カ月で子猫を産める。年に2~4回出産し、1回で4~8匹産むと、1匹の猫が1年後には20匹以上になる。大津さんは「不妊化手術をしていない飼い猫が、外に出ている間に野良猫の親になるケースも多い」と指摘する。
 通常、捕まえた猫は動物病院に連れて行き手術するが、専用車があると獣医師が直接地域に赴き、その場で手術が可能になる。「活動者がいない地域では、猫に関する悩みを抱えている人も少なくない。専用車を使うことでTNRは県内すみずみに行き渡らせることができる」
 大津さんは今月、長野や岐阜、東京など福祉や行政と連携したTNR活動を実践している先進地を視察。導入の必要性を再認識した。「地域の垣根を越え、初めての人も相談しやすい、敷居が高くない活動にしたい。地域、行政、福祉、獣医師、活動者、これからを生きる子どもたち-。それぞれがよい方向に進む運用システムをつくりたい」と構想を語る。
 専用車はワンボックスタイプを予定。CFは28日、当初の募集額600万円を集め成立した。次は期限の31日までに「ネクストゴール」として700万円を目指す。追加分は運営体制の充実に使う。車両の運用開始は9月の予定。
 大津さんが営む保護猫カフェにはキャッチフレーズが掲げられている。「ネコノコトはヒトノコト、そしてチイキノコト。地球は人間だけのものではありません」。ヒトとネコの共生に向けた車両の運用が始まろうとしている。

保護猫カフェの猫をあやしながら「専用車はスタート地点。助かるシステムづくりはこれから」と語る大津さん=川棚町中組郷、かわたにゃんず

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