〈激戦地ルポ 2023長崎県議選・3〉松浦市区 支持割れ 動きに濃淡

出陣式で第一声を上げる石本候補(右)と日高候補=3月31日、松浦市内

 自民現職の石本政弘候補と無所属新人の日高雅之候補がしのぎを削る松浦市区。地元市議や水産、経済関係者らの支持は割れ、動きに濃淡もある。ただ選挙戦突入が確定的になって1カ月足らず。一般市民の関心をどこまで高められるか両陣営は気をもむ。
 前回は無所属で挑んだ石本候補。保守系市議の大半の支援を得て自民現職を下したが、その後の所属会派や離党(現在は復党)を巡る対立で複数の市議がたもとを分かった。
 前回の2倍近い140超の企業団体の推薦を得て、農業層を中心に支持固め。だが陣営からは「盛り上がりに欠ける」との声が漏れる。「無投票の公算が大きい状態が続いたから」。後援会長を務める前市長の友広郁洋氏はこう分析する。
 陣営は選挙戦になったと周知を図り「確実な票」を積み上げていく構え。友広氏は前回の投票率(58.28%)を上回る「60%台を期待したい」とする。
 対する日高候補は、出馬表明が3月10日と出遅れたのを挽回しようと、経済界や水産業界での切り崩し、浸透を急ぐ。公設秘書を務めた縁から、元横浜市長で自民参院議員の中田宏氏も、日高候補の支援を決めた有力者らに直接電話で感謝を伝えた。
 現職批判票を取り込む上でも、投票率アップは至上命令。北松浦青年会議所理事長や松浦商工会議所青年部会長を務めたとはいえ、知名度や組織力では劣る。演説を重ねながら「相手は(前回の票数まで)伸びないと思う。『若い人に松浦を変えてもらおう』という人をどれだけ引っ張り込めるかだ」と追い上げに気勢を上げる。
 一方、地元で影響力を持つ金子原二郎元農相は「自民公認候補を応援する立場」(関係者)としながらも姿は見せていない。石本候補は演説で「絶大な支援をいただいている」と強調する。
 だが、金子氏を支援してきた市議の一部や関係者が日高候補陣営に入り、新松浦漁協は両候補推薦とした。ある有力経済人は「人目のない所で日高への投票をお願いする」と明かす。逆に、日高候補を支持していた市議が自身の支援者の意向を「無視できない」として石本候補側に転じるケースも。つばぜり合いが過熱している。

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