多様性のある議会へ 女性議員増に向け連携の動き 長崎統一地方選

「女性議員を増やすのが第一」として一緒に街頭活動をする立候補予定者の女性2人=3月30日、長崎市内(画像は一部加工)

 長崎県議選(9日投票)の候補者66人のうち女性は過去最多の9人だが、全体に占める割合は13.6%と依然低い。8市町議選(23日投票)も女性候補は10%程度にとどまる見通し。そんな中、女性議員の数を増やそうと県市議選で連携する動きがあった。多様性のある議会を目指しLGBTQ+(性的少数者)の当事者も出馬を準備している。
 「女性の目線でこのまちの課題を見つめ、未来をつくっていく」。県議選告示前日の3月30日、長崎市中心部の鉄橋。ある自民現職の女性立候補予定者が街頭演説をしていた。近くで、この女性のリーフレットを同市議選に無所属で出馬予定の女性が通行人に配っていた。
 2人は昨年2月の知事選では別々の候補を支援。だが今回は「女性議員を増やすのが第一」と、ある会合で出会ったのを機に急接近。実際、「女性同士だと目を向けてもらいやすい」と効果を実感したという。
 昨年11月末時点で、県市町議会の女性議員数は4年前の統一地方選前より8人増えて39人。だが全体の定数434の1割に満たない。少子化が社会問題となって久しく、依然として女性が子育ての多くの部分を担っているにもかかわらず、政治の場で活躍する女性はなかなか増えない。
 県議選長崎市区の女性新人候補も告示日に鉄橋で「おじさんばかりの政治じゃだめなんです。女性をもっと県政に」と訴えた。別の選挙区の女性現職候補は「女性候補なので応援する」と多数の人から声をかけられたという。
 一方、演説で性別に一切触れない女性候補もいる。ある現職候補は「人口の半分は女性なのに、今の政治状況は確かにおかしい。ただ、性別に関係なく政策や個性を訴え、勝ち上がらなければ」と言う。
 男女にとらわれない「性の多様性」の実現を争点の一つにしようとする動きもある。長崎市議選にはLGBTQ+の30代新人が立候補を予定。子どもを含めたLGBTQ+からの相談窓口や当事者カップルのパートナーシップ制度の充実を目指す。
 戸籍上は男性だが、自認する性は「どちらかといえば女性」。飲食店のオーナーママとして女性の容姿で切り盛りしてきたが、新型コロナウイルス禍で夜の街全体が疲弊する中「飲食や観光業界のため立ち上がりたい」と店を畳み政治家を志した。
 ママ時代も、政治活動の中でも、性に関するさまざまな悩みを聞く。社会の多数派が不便を感じなくても、多くのトイレは性的少数者が使いづらく、高齢者らにとって不便な横断歩道や歩道橋は少なくない。誰もが暮らしやすい社会に向け、少数派の当事者だからこそ「長崎が気付かないところに視点を向け、政治的に変えられることがある」と考えている。

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