8年ぶり選挙戦の公算 長崎・小値賀町議選 定数割れ懸念から一転、新人多彩な顔触れ

14枠が確保された小値賀町議選候補者のポスター掲示板=同町役場前

 統一地方選第2ラウンドの一つ、北松小値賀町議選(定数8)が18日告示される。なり手不足で当初は定数割れが懸念されていたが、議会や元議員らによる啓発活動などが実を結び、30~70代の男性10人が立候補を予定。過去一度もない女性の出馬は今回もない見通しだが、8年ぶりの選挙戦に突入する公算が大きくなった。
 島内の漁港や役場の近くなど38カ所に立つ町議選のポスター掲示板には、定数を大きく上回る14人分の枠が確保されている。
 4年前の前回選は届け出締め切り直前に元職が名乗りを上げ、定数割れを回避したものの無投票だった。その後1人が辞職し欠員が出た。現在、現職7人の平均年齢は70歳超。うち複数が高齢などを理由に今期限りでの引退意向を示したことから、定数割れが取り沙汰された。
 危機感を強めた町議会は昨年、議会の在り方を考えるシンポジウムを開催。「大募集!求む!あなたの力を!議会に!」の大見出しを踊らせた「議会だより」特別号も発行するなど啓発活動を重ねた。議長経験者で前回引退した男性は、地方自治をテーマに公民館講座を開くなどして住民に議会の重要性を訴え続けてきた。
 そのかいもあり、2月末の立候補予定者説明会には現職3、元職1、新人9の計13陣営が出席。町選管によると、14日時点で、うち9陣営が届け出書類の事前審査を済ませた。出馬予定の現職は議長と副議長、総務文教厚生委員長の3人。残り4人は今月発行の議会だよりで引退を明言し、これまでの支援に感謝した。
 新人は多彩な顔触れがそろう。50代の元渋谷区議は、同町議会のなり手不足を報道で知ったのをきっかけに今年移住した。70代警備員は昨年半世紀ぶりにUターンした古里を「盛り上げたい」。十数年前に移り住んだ50代農業者は、候補者増に向け地元の人を触発したい思いがある。移住4年の30代公衆浴場経営者は「地縁血縁で投票先が決まる現状」を変えたいという。40代商店経営者や40代住職は、生まれ育った古里のために立ち上がった。70代の元職も議会の窮状を憂い、手を挙げた。
 8年ぶりに選挙権を行使できる見通しとなった町民からは歓迎する声が上がる。40代女性は「同世代が出てきたのがうれしい。働き盛りの子育て世代の視点は大事。変化に期待したい」。一方、50代男性は「選挙戦はいいことだが、移住して日が浅い候補は人柄も分からない。しっかり見極めたい」とする。
 住民有志は16日午後7時から町内の離島開発総合センターで公開討論会を開き、立候補予定者に4年後の小値賀を語ってもらう。動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信する予定。

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