現職に新人挑む茨城・日立市長選 市民待望選挙戦、24年ぶり「やっと」

日立市長選に立候補した小川春樹氏、田村弘氏(左から届け出順)

茨城県日立市長選は、いずれも無所属で、3選を目指す現職の小川春樹氏(75)=自民、公明、国民推薦=と、新人で電気工事業の田村弘氏(51)が立候補を届け出、1999年以来24年ぶりの選挙戦に入った。現職に新人が挑む。小川市政2期8年の評価が問われる。

小川氏は午後4時、同市旭町のホテルで出陣式。支援者ら約430人(陣営発表)を前に「これまでの取り組みをさらに前進させるか、後退させるかを見極める選挙だ」と述べ、人口減少対策や安全安心のまちづくりなどを訴えた。

田村氏は午前11時半、同市鹿島町の事務所で支援者と出陣式。その後、JR日立駅前に立ち、市長報酬の3割削減や市民の命と財産を守る市政運営などを訴え、「安心して住むことができ、来て楽しめる街にしたい」と述べた。

15日現在の有権者は14万7525人。

■陣営「新人の気持ち」「挑む価値ある」
過去5回続けて無投票だった日立市長選は、現職と新人の2人が立候補を届け出て、1999年以来24年ぶりの選挙戦に突入。有権者や陣営からは「ようやく権利を行使できる」「これが当たり前」と歓迎の声が上がった。

共働きで子ども4人を育てる市内の40代女性は、20年近く前に移住後、初めての投票。無投票に慣れていたため「選挙になったこと自体が驚き」という。

選挙戦について、女性は「まちのことを考えるきっかけになる」と前向きに受け止める。人口減少が進む中、市内女性の労働率がほかの地域より低いことを課題に感じており、「やっと巡ってきた機会。女性活躍に関する政策に着目して、必ず投票に行く」と語った。

市議選に立候補している現職市議も、論戦の深まりに期待を寄せる。選挙戦になったことで「動物園へのジャイアントパンダ誘致の是非という争点が生まれている」と指摘する。長く市内の選挙に関わってきた60代男性も「志ある人間が出ることで、まちの活性化につながる」と好意的だ。

市長選で選挙戦になったのは99年4月が最後。以降、現職の小川春樹氏(75)まで3人の市長が無投票当選を重ねてきた。今回は新人の田村弘氏(51)が3月中旬に出馬を表明し、「6回連続無投票」の見方を土壇場で覆した。

3選を狙う小川氏は「毎回選挙を前提に準備してきた」といい、今回は後援会青年部を拡充して臨む。陣営幹部は「当たり前のことが日立ではこれまでなかった」とした上で、「今回は新人と同じ気持ちで取り組む」と意気込む。

田村氏は昨年12月、小川氏の立候補表明に触れ、「また無投票になるのでは」と出馬へ気持ちが傾いたという。「支持基盤がない厳しい戦いだが、論戦を通じて主張が届き、市政に反映されるだけでも存在価値はある」と話す。

同市は日立製作所の創業地で、日立グループを中心とする連合傘下労組の牙城。市長選では、企業や労働界などが共通の候補者を支援する構図が続いてきた。

近年は企業再編で労組の組織力低下が指摘されるものの、労組関係者は、現在も市人口の約4割は同グループと何らかの関わりがあるとみる。市議の一人は「そこに割って入るのは相当難しい」と語り、対抗馬が出にくい背景を指摘する。

■日立市長選立候補者(届け出順)
小川春樹(おがわはるき) 75 無現(2)
【略歴】市長、市スポーツ協会会長、市社会福祉事業団理事長、日本水道協会県支部長[元]副市長。県立日立一高卒。多賀町[自][公][国]
【公約】安全・安心のまちづくり、地方創生・人口減少対策、都市力の向上、持続可能なまちづくりなど

田村弘(たむらひろし) 51 無新
【略歴】常陸放送設備代表取締役[元]FMひたち代表理事、日立電線社員、茨城高専非常勤講師。一関工業高専卒。東京都足立区
【公約】0歳からの育児支援と学生支援、歳出歳費の適正化、防犯防災、原発処理水の安全担保と補償など

()内の数字は当選回数。略歴の末尾の[内は推薦・支持政党

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