「これが核の真実だ。残り1か月で発信を」 共同通信・太田編集委員に聞くG7広島サミットの焦点 核廃絶メッセージは “悲観的”

G7広島サミットの開催まであと1か月になりました。ロシアのウクライナ侵攻など、世界の状況は厳しさを増しています。サミットで核廃絶に向けたメッセージは発信できるのでしょうか? 核問題に詳しい、共同通信の 太田昌克 編集委員に聞きました。

小林康秀 キャスター
「まずうかがいたいのですが、先日、岸田総理の和歌山での演説の前に爆発する事件が起きました。このサミット1か月前のタイミングでこういった事件が起こったことに対して、どのようにご覧になっているでしょうか」

共同通信 太田昌克 編集委員
「たいへん由々しい事態だと思います。多くの人が集まる選挙と、各国の要人が集まるサミット。これは全く違う局面だと思うんですけれども、やはり日本という、G7の一角を占める国。しかも非常に残念なことにアジアに緊張関係を抱えている重要な国なんですね。そういった中で日本の現職の総理が襲われたっていうのは非常に重い意味がある」

15日、和歌山市で岸田総理の演説直前に爆発物が投げ込まれた事件。去年7月の安倍元総理への銃撃事件から1年と経たないうちの出来事でした。犯人の動機は分かっていません。広島サミットに与える影響については…

共同通信 太田昌克 編集委員
「これ、間違っても各国の要人に被害が出れば、日本の権威っていうのは失墜します。もしも何かありましたら、岸田政権はおそらく進退を問われることになります。なぜなら今回、岸田総理自身がこういう襲撃事件にあった直後に、仮に広島で要人に対する襲撃事件が発生した場合は、わたしは内閣退陣ものだと思っていますので、何とか要人警護、万全にしていただきたいということ」

来月の広島サミットに向け、各地で関係閣僚会合が始まるなど、本番に向けた最終段階を迎えています。17日はサミットの土台となるG7外相会合が閉幕し、林外務大臣が「引き続き『核兵器のない世界』へのコミットを再確認した」と強調しました。サミットでの核廃絶に向けた議論は…

小林康秀 キャスター
「(サミットで)核廃絶に向けた議論を望んでいるところはあると思うんですが、広島としては。実際、どこまで踏み込めるのか、そのあたりの見通しはどうなんでしょうか」

共同通信 太田昌克 編集委員
「非常に広島のみなさん、そして長崎もそうだと思うんですけれども、期待値高いと思うんですね。岸田総理の首脳外交を支えているスタッフを取材していまして、ちょっと、わたしはペシミスティック、悲観的なんですね。いかなる形でも(核兵器を)未来永劫使わないんだという宣言が出るかどうかといったら、わたしは、はなはだ疑問なんです。すなわち、使わないとトップが明言したとたん、核の脅しが効かなくなるんじゃないか。そういう懸念を持っているのは、実はフランスを中心とした核保有国なんですね」

そもそもG7のメンバーは、核保有国が3か国、核の傘の下にある国が4か国。それが北朝鮮のミサイル発射、米中対立を背景にした台湾情勢の緊張などを背景に、核保有国や日本を含めた核の傘の下にある国も、核廃絶とは逆に核への依存を強める傾向にあるといいます。

共同通信 太田昌克 編集委員
「ある外務省の高官はわたしにこう言っているんですね。太田さん、あなたのいう『核なき世界』というのは非常によくわかる。しかし、今は抑止力を上げる時だと。やはり『核なき世界』ということは、もちろん言うんだけども、たちまち、もう核を使いませんということは、やはり核保有国は言えないんじゃないか。なぜなら抑止力を弱めてしまうからだと。今、G7の政策エリートたちが考えていることは、抑止をより強めなきゃいけない時なんだと。だから、核を二度と使わないというふうなことを公式に宣言することは難しいというのが、今のG7の国々の共通認識だというふうに考えていいと思います」

G7サミットまで残り1か月。長年、核兵器廃絶を訴えてきた被爆地・広島に求められることとは…

共同通信 太田昌克 編集委員
「サミットのプロセスっていうのは密室の協議で行われて、最終文書の策定も最後まで密室で行われるんですけれども、大切なことはわたしたちがしっかりと声を上げていくことだと思うんですね、この1か月で」

「やはり、こんなことが起きるんだよと。核を使ったら、こんなとてつもない、いまだ、この78年続いている戦後の歴史、この中でも多くの被爆者の方々が苦しんでおられるんだ。放射線におびえていらっしゃる方がたくさんおられるんだ。これが核の真実だ。だから、それが使われた時にどんなことがあるのか、そういったことに依存した核の抑止力って本当に安全なんですか。本当に持続可能性があるんですか。そういう問いをやっぱり、わたしたち自身がより強くこの1か月、発していかなくてはいけないし、むしろ核抑止にしがみついている政治リーダー・政策エリートに覚醒ですね、目覚めてもらう機会がやっぱり広島サミットでなくてはいけないと思います」

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