長崎市長選情勢 人口減対策や現市政の是非、4新人が舌戦に熱

新市庁舎を望む長崎市中心部の鉄橋で街頭演説する市長選の候補者。有権者は16年ぶりに誕生する新リーダーに誰を選ぶのか

 無所属新人4人による争いとなった長崎市長選は23日の投開票に向け終盤戦に入った。4期務めた田上富久氏(66)の退任に伴い、16年ぶりに県都の新たなリーダーが誕生する戦い。人口減少対策や現市政の継承の是非などを巡り、舌戦が熱を帯びる。
 届け出順に前九州運輸局長の鈴木史朗(55)=自民、公明推薦=、会社経営の原拓也(54)、社会福祉法人理事長で元市議の吉富博久(78)、前県議の赤木幸仁(38)の4候補。
 「オール長崎で(人口減少の危機を克服し)長崎を再生する」。鈴木候補は18日夜の個人演説会で声高に訴えた。自民系の県議や市議候補らが連日登壇。支持を表明した田上氏の後援会スタッフらも支え、連合長崎など800超の企業・団体が推薦。組織力で圧倒するが、陣営幹部は「うちが一番弱いのは無党派層。浸透具合はまだまだ」と気を引き締める。
 原候補は周辺地域の交通の利便性向上や民間活力の活用など「市民に身近な施策」を掲げる。18日の街頭演説では、野球観戦に向かう市民らに「子どもを豊かに育てる」と文化・スポーツの振興を中心に語りかけた。大きな支援組織はないが、市内全域に広がる長年のPTA活動の人脈をてこに、地道に市民と対話を続け「想定以上の反応をもらっている」と前を向く。
 吉富候補は市内を選挙カーで細かく回り、街頭演説を重ねている。訴えの中心は「一丁目一番地」と位置付ける子ども・子育て支援や、松山町の陸上競技場の現地存続。市民ランナーら有志も支援し「選挙戦を通じて競技場問題も浸透してきた」と陣営関係者。吉富候補は「一人でも多くの市民に現市政やその継承がおかしいと伝える」と、批判のボルテージを上げる。
 「変化を実感できる長崎をつくる」と訴える赤木候補は街宣に加え、夜はSNS(交流サイト)を使ってライブ配信。GPS(衛星利用測位システム)で選挙カーの位置をリアルタイム配信するなど新技術も活用し「市民との対話」に力を入れる。組織に頼らない選挙戦を展開するが「閉塞(へいそく)感漂う市の現状打破」への共感は確実に広がっているとみて追い込みをかける。
 現職と新人3人が立候補した前回2019年の投票率は47.33%。戦後初めて50%を割り込み、低迷している。ただ9日投開票の県議選長崎市区は47.03%で前回より2.35ポイント上昇。市長選と同じ日に投開票される市議選の候補者数が57人と前回より12人増の大混戦となっており、各陣営は盛り上がりに期待し前回を上回るとみる。50%に届くかどうかが一つのポイントになりそうだ。

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