映像通報、本格運用 110番、スマホ写真も送信 不明者早期発見に期待

スマートフォンなどから映像や写真を送信することができる「110番映像通報システム」

通報者がスマートフォンで撮影した現場の写真や動画を送れる「110番映像通報システム」の本格運用が4月から始まった。リアルタイムの写真にとどまらず、スマホなどに保存されているデータも送信できる。試行期間中の昨年秋には、行方不明となった男児の顔写真が決め手となり、早期発見につながるケースもあった。

同システムは、茨城県警通信指令課の担当者が必要と判断した場合、110番通報者がスマホなどから写真や動画を送信できる仕組み。通報者は、動画の著作権放棄や位置情報の提供、データ通信料の負担などの同意が必要。提供した動画は原則、1週間後に自動消去される。

同課によると、昨年10月~今年3月の試行期間で130件の活用があった。このうち、行方不明者の「保護・救護関係」が81件と最も多く、次いで不審者などの情報が29件、刑法犯関係が10件、交通関係と災害関係がそれぞれ5件だった。

有効活用が期待されるのは、試行件数の6割を超えた行方不明事案だ。昨秋には、10歳男児の家族から「屋外で遊んでいたら息子が行方不明になった」と110番通報があり、同課担当者が家族のスマホにショートメールを送信。その後、同システムを通して送られた男児の顔写真が捜索に当たる警察官の間で共有されたことで、通報から約1時間後の発見、保護につながった。

これまでの行方不明者捜索で現場警察官に共有されていたのは、通報を受けた担当者が聞き取った身体的特徴や服装の情報にとどまっていた。顔写真については、家族が署や交番を訪れるまで得られなかった。

警察庁によると、全国では、駐車場で当て逃げされた被害者が逃走車両の写真を撮影して提供、摘発につながったケースが報告されているという。このため、県警は、その他刑法犯の摘発などでも同システムを有効活用したい考えだ。

同課は「第三者のプライバシーを侵害しないなど、丁寧に運用していきたい。通報者の安全を確保した上で、撮影や写真の提供に協力してもらえたら」としている。

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