南米相互交流復活。SCBがアルゼンチンTC2000『ブエノスアイレス200km』とのジョイント開催を発表

 ブラジルを代表する最高峰“ティントップ”シリーズのSCBストックカー・ブラジル・プロシリーズと、隣国アルゼンチンにて『南米大陸でもっとも技術的に高度なツーリングカー選手権』と称するTC2000シリーズ(旧スーパーTC2000)が、ふたたび南米相互交流の実現に向け新プロジェクトを発表。早くも今季10月にはTC2000を代表する祭典『ブエノスアイレス200km』にSCB側が合流して併催イベントを実施し、来季2024年にはブラジル・インテルラゴスでも交流戦を開催するとアナウンスした。

 同国出身の元F1ドライバーや北米のトップシングルシーターで活躍する大ベテラン、さらに耐久の世界選手権に並行参戦するレギュラーなど、数多くのトップドライバーが参戦するSCBが、ふたたびアルゼンチンに進出。20年以上の開催実績を誇る同国を代表する元F1トラックで、17回目の開催を数えるツーリングカー長距離イベントの週末に向け、併催戦を実施するプランを打ち出した。

 ともに南米で長い歴史を持つ両カテゴリーは、その紆余曲折の中で過去にも幾度かのコラボレーションレースを開催した実績を持っており、2017年から2018年にかけても相互交流の協議を続け、2017年の『ブエノスアイレス200km』にはSCB側がマシン複数台を含めたレース開催に必要な機材一式を持ち込み、合同デモンストレーションを披露したこともあった。

 SCBのプロモーターを務めるVicarのフェルナンド・ジュリアネッリCEOや、TC2000を運営するTango Motorsports代表のアレハンドロ・レヴィを筆頭に、両シリーズに参戦する複数のドライバーが列席した発表会では、お互いのシリーズトップが「南米のモータースポーツを祝福する日」だと、新たなコラボレーションに歓迎の意を示した。

「ブラジルのファンはTC2000をよく知っている。間違いなく、我々の協会が発したニュースはブラジルの聴衆に大きな影響を与えるだろう」と挨拶したSCBのジュリアネッリCEO。

「それは質の高いドライバーと多くの歴史に満ちた、ふたつの偉大な自動車イベントの融合だ。そしてもちろん、歴史的な場所である(ブエノスアイレスの)オスカー・ファン・ガルベスで競争する機会にとても満足している」と続けたジュリアネッリ。

「それは象徴的で伝説的なトラックであり、大きな論争の場だ。10月8日のスタートに向けドライバーとチームが特別な瞬間を迎えることは間違いない。そして、2024年にはインテルラゴスでTC2000を開催し、別の素晴らしいモータースポーツ・ショーを開催できることを楽しみにしている」

 一方、TC2000を統括するレヴィ代表も「我々にとって、南米モータースポーツの戦略的提携を発表できることは大きな喜びだ」と応じた。

「晴れて今季10月7日と8日に、ストックカーがブエノスアイレスのオスカー・ファン・ガルベス・オートドロームをふたたび訪れる運びとなった。国際レベルのドライバーによる現代的で技術的なモータースポーツを目標に、我々Tango MotorsportsとブラジルVicarは、この共同計画を強化し続ける」とレヴィ代表。

「このイベントは適切なタイミングで開催され、双方のカテゴリーだけでなく両国で存在感を示すチーム、ドライバー、およびそのスポンサーにもさらなる成長をもたらすだろう。そして確実に、この新しい戦略的機会は我々の国とブラジルにおいて、TC2000だけでなくステップアップを含めたより多くの大会を一緒に実施するよう、2024年以降も我々を導いていくだろう」

発表会にはSCBのプロモーターを務めるVicarのフェルナンド・ジュリアネッリCEOや、TC2000を運営するTango Motorsports代表のアレハンドロ・レヴィを筆頭に、両シリーズに参戦する複数のドライバーが列席した
2017年当時の『ブエノスアイレス200km』でも、SCB側がマシン複数台を含めたレース開催に必要な機材一式を持ち込み、合同デモンストレーションを披露していた
現在のTC2000では、フランス・オレカ製の2リッター直列4気筒直噴ターボのワンメイクユニットを搭載する

■バリチェロ「ストックカーとTC2000のこのような関係に本当に満足している」

 同じくその席上で挨拶した現SCBチャンピオンのルーベンス・バリチェロは、シリーズにTOYOTA GAZOO Racingブラジルが参入してTGR所属ドライバーとなった2020年から、約2シーズンで『掛け持ち参戦』にチャレンジし、地元の大排気量V8の後輪駆動ストックカーと隣国の直噴4気筒ターボを積むハイテクFFツーリングカーの『二足の草鞋(わらじ)』を経験している。

「ストックカーとTC2000のこのような関係に本当に満足しているよ。アルゼンチンで戦う機会を得た2年間は、楽しみながら多くのことを学んだからね」と続けた歴代3位のF1出走記録も保持する元跳ね馬ドライバー。

「この連合は南米のモータースポーツにとって非常に重要だ。あるモータースポーツが他のモータースポーツよりも『優れている』と考えるべきではなく、むしろ僕らのカテゴリーを強化し、より良い点を統合していく必要があるからね」

 同じくアルゼンチンの“絶対王者”としてTC2000シリーズ5冠の記録を持ち、2021年からブラジルでの挑戦を開始した強豪フルタイム・スポーツ所属のマティアス・ロッシも、バリチェロやSCBで5度のタイトルを獲得する“帝王”カカ・ブエノらを前に「ルーベンスやカカは、僕らの国のモータースポーツを熟知しているドライバーだ」と、新たな交流の機会を喜ぶ。

「彼らはアルゼンチンという国の情熱を知っており、ブエノスアイレス200kmのような重要な国際レースにも参加してくれていた。ブラジルのモータースポーツが僕に与えてくれたすべてのものに対しても、真に特別なレースになるだろうね」

 そしてTC2000で頭角を現し、今季より並行でフル参戦を開始したTCRサウスアメリカでは開幕4戦3勝という圧巻の戦績を残している18歳のイグナシオ・モンテネグロも、自身が所属するアクシオン・エナジー・スポーツTC2000のルノー・フルーエンスGTでブラジルを走る日が「待ち切れない」と期待を寄せる。

「TC2000とストックカーの間でこうした提携関係を維持できることは、他に類を見ない取り組みだと思う。同じ週末をルーベンス・バリチェロやカカ・ブエノ、マティアス・ロッシといった偉大なドライバーたちと共有する機会は、僕にTC2000で学び成長し続けるモチベーションを与えてくれるよ」

 この発表と合わせて、SCBは2023年シーズンで未定とされていた5月の第3戦、6月の第4戦、同じく9月の第8戦の開催地もアナウンスし、5月21日は1979年にシリーズが産声を上げた記念すべき初開催地タルマンへの復帰を決め、6月18日はカスカバル、9月17日はヴェロパークでレースを実施。これで年間全12戦のサーキットが確定している。

今季2023年はチャンピオンとして、愛息”ドゥドゥ”ことエドゥアルドと参戦するルーベンス・バリチェロ
お互いのシリーズトップが「南米のモータースポーツを祝福する日」だと、新たなコラボレーションに歓迎の意を示した
今季10月7日と8日に、ストックカーがブエノスアイレスのオスカー・ファン・ガルベス・オートドロームをふたたび訪れる運びとなった

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