自治医大吹田助教、ベルギー漫画を翻訳 「老いや性、考える契機に」

「わたしを忘れないで」の翻訳を担当した吹田さん=17日、自治医大

 自治医大医学部助教の吹田映子さん(40)が翻訳した漫画「わたしを忘れないで」(太郎次郎社エディタス刊)が出版された。著者はベルギーの作家アリックス・ガランさんで、認知症や性の多様性、死生観などをテーマにしている。吹田さんは「日本ではタブー視されがちな老いやジェンダーについて考えるきっかけになる一冊」と魅力を語る。

 青森県出身の吹田さんは、2019年から同学部総合教育部門(文学)に勤務する。19世紀末〜20世紀にかけてのベルギー美術とシュールレアリスムを専門にしている。

 21年12月、ベルギーの書籍を海外向けに紹介する会合に参加した際、表紙の美しさに一目ぼれ。自身初となる翻訳への挑戦を決意した。下準備も含め半年間ほどで日本語訳を完成させた。「短い言葉で適切かつ読みやすく表現するのは難しかった」と振り返る。

 主人公は認知症の祖母を持ち、自身の性について葛藤を抱える若者クレマンス。幼少期を過ごした海辺の実家へ帰りたいという祖母の願いをかなえるため、介護施設から連れ出し、車を走らせる。ガランさんのデビュー作であり、ベルギーでは数々の賞を受賞している。

 シリアスな主題を取り上げているが「温かみのある線とカラフルで透明感のある色彩で描いているのが特徴。重々しくない雰囲気なので、幅広い年代の方が手に取りやすいのでは」と吹田さんは話す。

 A5判、224ページ。2千円(税別)。書店やインターネットで購入できる。電子版もある。

 (問)太郎次郎社エディタス03.3815.0605。

© 株式会社下野新聞社