茨城県警察学校 助け合い、団結深める 「奥久慈縦走」17キロ踏破

鎖を伝って岩場を登る県警察学校の初任科生=大子町の男体山

■記者同行
茨城県警察学校(小泉辰也校長)に、険しい道のりを同期と力を合わせて踏破する伝統行事「奥久慈縦走訓練」がある。警察官として心身を鍛え、団結を深める機会として半世紀以上続いており、今年は採用直後の18~33歳の初任科生129人が参加。同県大子町の男体山(標高654メートル)から月居(つきおれ)山(同404メートル)を経由して袋田の滝に至る約17キロの行程に、記者も同行した。

「落石注意!」「滑りやすいからゆっくり」。静かな山中に、初任科生たちの元気な声が響く。今月18日、まだひんやりとした空気が漂う男体山。一行は隊列を組み、しっかりした足取りで進んだ。

高さ2メートル以上の岩場も、初任科生たちは鎖を伝ってするすると登る。記者もその姿に倣って岩に足をかけるが、1歩目で滑った。「落ち着いて。そこに足場になるくぼみがあります」。初任科生の助言で、何とか登り切った。

午前8時ごろに登り始め、男体山の山頂に到着したのは午前10時。初任科生たちは、記念撮影する時間すら惜しむように月居山へ向けて出発した。

記者にとって、その道中は過酷そのもの。幅30センチにも満たない崖沿い、倒木が斜面を遮って途切れた登山道。息も絶え絶えに足を運ぶ記者を横目に、初任科生たちは不安定な足場を物ともせず、すいすいと登っていく。

そんな初任科生の最年長は田中翔平巡査(33)。大学卒業後も採用試験に挑戦し続け、今春、子どもの頃からの夢をかなえた。結婚し、子どももいるという田中巡査は「茨城の子どもたちの安全を守れる警官になりたい」と意気込む。

訓練では午後2時ごろ、雨が降り始めた。ぬれて滑りやすくなったゴール間近の岩場や階段では、初任科生たちが「焦るな」と励まし合う場面も見られ、8時間の行程を歩ききった。

道中で盛んに仲間を励ましていた古神祥太巡査(31)は、「今日は皆で助け合い、いつも以上の力を発揮できた」と笑顔。消防士などを経て現職に就いた古神巡査は、若い頃に道を踏み外しかけた時、警察官から「人生は何歳からでも再スタートできる」という一言で生き方を変えたという。「その人の言葉で今の自分がある」。古神巡査は、その言葉を胸に刻み、警察官の道を進み続けるつもりだ。

今春の入校生は短期課程(大卒)72人と長期課程(高卒など)57人。短期課程は半年間、長期課程は10カ月間、寮で暮らしながら法律や逮捕術を学ぶ。卒業後は県内各地の交番に配属され、警察官人生をスタートさせる。

© 株式会社茨城新聞社