社会で認められた「私」 LGBTQ+当事者の選挙戦 「希望」になる長崎市議に

初当選を確実にし、花束を手に笑顔を見せる都留さん=長崎市興善町の選挙事務所

 4月23日に投開票された統一地方選の長崎市議選。日本維新の会新人の都留康敏さん(33)はLGBTQ+(性的少数者)の当事者として当選を果たした。選挙活動中は街頭演説や交流サイト(SNS)で「多様性を認め合う長崎に」とのメッセージを有権者に届け、共感の輪を拡大。「私は私らしく」で市政に新風を吹き込んでいく。
 市南部出身。戸籍上は男性だが自認する性は「どちらかといえば女性」だ。幼い頃から「きれいな物」が好きで、よく女の子と人形遊びをした。市内の高校を卒業後、関西で宝石店やアパレル会社に勤務。2012年にUターンして「夜の世界」に飛び込み、翌年には独立した。
 「かす美ママ」として市中心部で9年間営んだ飲食店。自分にだけ性に関する悩みを打ち明けてくれる客もいた。「私だからこそ発信できることがある」。第一の選挙公約に、LGBTQ+やジェンダー平等への理解追求を掲げた。
 多様性を象徴する虹色の旗を振りながら選挙カーで市内を巡り、終盤は女装家の友人にウグイス嬢を頼んだ。選挙戦を通じて発信した「自分らしい生き方」。出会った若者も「投票に初めて行ってみようかな」と関心を持ってくれた。
 24日未明、当選が確実となり歓喜に沸いた事務所。ピンヒールと鮮やかなピンク色のジャケットを身に着けた都留さんは言った。
 「こういう見た目の私でも社会の中の1人として認められる。そんな『希望』になれたらいい」
 5月2日には4年間の任期が始まる。「小さな生きづらさに気付ける議員になる」。市民の代弁者として期待と責任を背負う表情は、晴れやかだった。

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