大分市が戸次本町地区の案内動画を作成 歴史ある建物、貴重な内部映像も【大分県】

大分市有形文化財の帆足本家酒造蔵など地区の代表的な建造物などを紹介したガイド動画の画面
「普段は非公開の建物内部も見て戸次本町の歴史を感じてほしい」。タブレット端末の利用を呼びかける金子多美子会長(右)と大分市の担当者=大分市
戸次本町ガイド動画のトップ画面。動画は建造物ごとに分かれ、地区の歴史や周辺地域の紹介の項目もある
SAORIさんのユーチューブ「散歩するアンドロイド」の大南地域紹介動画の一場面。地区内の店舗なども紹介

 【大分】大分市は、歴史的な町並みが残る戸次本町地区の案内動画を作成した。地区で活動するガイドグループ「杏(あんず)の会」のメンバーが出演し、代表的な建造物の見どころやエピソードを紹介。住民の好意で、普段公開されていない内部や庭園の様子も盛り込んだ。協力店などに配置したタブレット端末で視聴できる。利用料は100円。

 戸次本町地区は交通の要衝として栄えた。城下町以外で商いを許された「在町」として発展。江戸時代末期から戦前にかけての町家や酒造蔵が現存する。ほとんどが現在も住居として使われている。

 動画は個人観光や飲食での来訪者らに、気軽に町並みの魅力に触れてもらうのが目的。▽市有形文化財の帆足本家酒造蔵▽南画家の帆足杏雨(きょうう)の旧宅「擅勝閣(せんしょうかく)」など9カ所を紹介。室内の一枚板の緻密な欄間彫刻、大切に受け継がれてきた調度品などが往時をしのばせる。旧料亭内では実際に使われていた座敷に膳を並べ、当時の様子を再現した映像もある。

 端末は地区内の▽大南まちづくりセンター(3台)▽喫茶杏寿▽量り売りからはな百貨店▽HARIYO▽カフェワンシーン(各1台)にある。持ち出しはできず、その場で視聴してもらう。市まちなみ整備課は「歴史的建造物の成り立ちを感じ、地区とガイドをより身近に感じてほしい」と利用を呼びかける。

 杏の会は地元の住民有志でつくり、予約制でツアーの団体客らに町並みを案内している。金子多美子会長(89)は「建物の中も見てみたいという声を聞く。動画で見てもらえるようになったことで案内にも厚みが出る」と導入を喜ぶ。

 端末は国の「地域の看板商品創出事業」の補助金で購入した。利用料は同会の活動支援と端末の管理費に充てる。

■人気ユーチューバーが大南地域の紹介動画

 大分市は、アンドロイドになりきって旅をするユーチューバー「SAORI」さんによる大南地域の紹介動画を作った。ユーチューブ「散歩するアンドロイド」と、市の公式動画チャンネル「いいやん!大分」で公開している。

 チャンネル登録者数は29万人を超え、旅好きの若者らに人気がある。動画(9分40秒)では、地域を巡る低速電動バス「グリーンスローモビリティ」に乗ったり、古い町並みが残る戸次本町地区を散策したりしている。カフェや食材店に立ち寄り、量り売りや薬草蒸しを体験する様子を収録。「大野川合戦まつり」といった地域の代表的なイベントや、梅の名所の吉野梅園なども紹介している。

 3月中旬の公開後、ユーチューブの視聴回数は8万回を超えた。市まちなみ整備課は「動画を見て一緒に旅をする気分になり、実際に訪れ、地域のさまざまな魅力に触れてほしい」と話している。

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