<金口木舌>精神を受け継ぐ新博物館

 タングー(炭俵)はかつて、やんばる各地で使われた民具の一つ。焼き上げた炭をこん包し、やんばる船で那覇や与那原まで運ぶために使われた

▼材料のススキをしっかりと編み上げるには熟練した技が必要。2日に開館する新名護博物館に展示されるタングーは、博物館友の会のメンバーが島袋正敏さん(79)から伝授され、作成したものだ

▼島袋さんは1984年に開館した旧博物館の初代館長。約40年前も博物館に展示するタングーを作った。慣れ親しんだ技術を次の世代へと伝えている

▼名護博物館は開館当時から展示物をケースに入れず、そのまま展示する「露出展示」という手法をとった。全国的に珍しく、生活の場で使われていたものを実際に見て、感じてほしいとの願いが込められている

▼「壊れたら、直せばいい。若い学芸員が民具を作り、追体験することが大切」と島袋さんは語る。職員らは開館直前まで展示を練り、民具の修理や製作にも携わった。受け継いだ技術や文化を守る精神は、展示物をより生き生きとしたものに変えている。

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